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「…あなた…今なにしたの…？」
瞳を潤ませながら震える声で言う彼女の手首をそっと離した。
シャンデリアの煌めく光が静かに、それでいてどこかうるさく辺りを照らす。
「…どこに行ってたんだ」
彼女の背後、ちょうど僕の視線の先にあったカーテンの陰から、突然一人の男が現れた。
眼帯で左眼を隠し、黒と赤を基調にした服に身を包んだその男は、どこか妖しく、敵に回してはいけないような雰囲気を纏っている。
「……ジュンギ…っ」
怯えたように駆け寄る彼女の肩を抱くジュンギと呼ばれた男。
彼は鋭い眼光で僕の方を眺めて、
「私の婚約者になんの用ですか？」
これまた鋭い言葉で僕を突き刺した。
ちょっとジュンギ、と小声で何か言う彼女は、本当に彼の婚約者のように見える。
今や僕だけが大理石の階段の上に残されて、ぽつりと立ち尽くしていて。
「…用がないようなら失礼します。
ほら、行こう」
なにも言えない僕を少し名残惜しそうにちらりと見て、彼女も、彼の後を辿った。
「明日また、ここで待ってます」
彼女の背中に、届くかどうかわからないほどの声で呟くと、虚しく輝く広間とシャンデリアのクリスタルが滲む。
いい加減教えてよ。
あなたは一体、誰なんですか？
彼女と同じ瞳をしただけの “スミレ” さん ？
ジュンギさんとやらの婚約者？
それとも。
僕の知っているあの、今はジョングクの婚約者となってしまったあなたなんですか？
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作者名：寧桜 | 作成日時：2018年10月22日 19時
