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ノック音に返事をすると、彼女の方の侍女が名乗り出た。
確か名前はミナといったか。
初めて俺をこの部屋へ案内したのもこの侍女だった気がする。
「…入れば」
「失礼します」
「なんの用？」
ただでさえ苛立ってるのに、こんなときに訪問してくる馬鹿がいるかよ。
頭を掻きむしってベッドから立ち上がり、彼女を出迎える。
彼女、ミナは、そんな俺の様子などまるで気にしない様子でちらりと部屋を見渡した。
「…A陛下は、」
「まだ帰ってない」
「そうですか」
「あんた彼女のお付きなんでしょ？ならちゃんと見張っててくれなきゃ」
沸き立つ腹立ちと怒りと悲しみと。
そんな感情を一切しまいこんで優しく笑ってやると、ミナは無表情のまま首を傾げた。
なんなの、こいつ。
どことなく主人に似ているこの侍女にますます黒い感情が湧き上がって。
「…なんか言いたいことでもあんの？」
じっと俺を見つめたまま動かない彼女に、俺はさらに笑いかけた。
「陛下がほかの殿方とお話しされていたこと、気になさっているのですか」
笑いかけたのも虚しく、未だ無表情でそんなことを言い放つミナ。
心臓の真ん中をぐさりとナイフで突かれたような感覚に、思わずベッドに座り込む。
「嫉妬、ですか？」
言葉を続けるミナを睨みつけると、さすがの彼女も怯えたのか、俺から目を逸らした。
…は？
“嫉妬”
って。
俺が？
はは。
誰にだよ。
てか、なんで。
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作者名：寧桜 | 作成日時：2018年10月22日 19時
