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「ごゆっくりお休みください」
「ん」
離れていく侍女を目で見送って、黒く大きな扉を開いた。
ここが、今日から俺の、いや、俺 “たち” の寝床らしい。
部屋の中は暗く、バルコニーへと通じる窓から生温い風が吹き込んでいる。
まるで人気のない室内。
隠れたって無駄なのに。
探るように部屋を一周すると、まだ使い込まれていない新品の家具たちが目に入る。
まるで俺 “たち” を待ち望んでいたかのように並ぶ棚やテーブル。
そのどの陰にも、死角にも、俺の探している人はいない。
…ようやくこの日が来たんだ、逃さねぇよ。
見つからないことに焦りを覚え始めたそのとき、ふと窓の外に何かを感じてバルコニーに出た。
「________________っ」
その姿に思わず言葉を失って、次にするはずのことを忘れてしまう。
丸い月の光を浴びる彼女の横顔は、きっとどんな蝶よりも儚い美しさを纏っていて。
くそ。
ふざけんな。
やっと、やっと彼女を目の前にしているというのに意味もなく高鳴る胸にいらだちを覚える。
「…久しぶりね」
むかむかする胸を抑えてポケットから取り出した銃をその頭に突きつければ、冷たく笑う彼女。
「自分の状況、わかってんの？」
同じように笑い返せば、彼女は表情一つ動かさず、静かに頷いた。
俺が撃たないと決めてかかっているのか、彼女は薄い微笑を浮かべたまま、自分の頭に突きつけられた銃に手をやる。
「私を殺すんでしょ？」
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作者名：寧桜 | 作成日時：2018年10月22日 19時
