繚乱の愛、一輪の愛 (ページ19)

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＊ページ19

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「…今、なんとおっしゃいましたか」

「…………っ」

「A様なんでしょ？」

「…違います」

「僕のことなんてもう忘れましたか？」

「…、」

「それならどうして、僕の名前を呼んだんですかっ」

細っちい彼女の手首を掴んで頬から離すと、蝶をモチーフにした美しい銀色の仮面の向こう、彼女は泣いていた。

涙を流してきらりと光る瞳はたしかに僕を見つめているのに、僕の問いには答えようとしない。

ただ虚しく戸惑う僕の声がホールに響いて消えていって。

ねえ、どうして？

何故、僕をこんなにも苦しめるのですか？

あなたは紛れもなくA様だ。

それならどうして、かつてのように嬉しそうに僕の名を呼んでくれないのですか？

ようやく会えたのに。

それなのに知らんぷりをできるほど僕は大人になんかなってない。

それでも。

あなたがそれでも他人のふりをするというのなら。

「それならこれも、無礼にはあたりませんよね」

「_____________________っ！？」

彼女の首に手を回し、触れるだけの、

キスをした。

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