繚乱の愛、一輪の愛 (ページ17)

今日:26 hit、昨日:4 hit、合計:28,335 hit

＊ページ17

・

華やかな喧騒を離れて一人、バルコニーに出た。

予想はしていたけど、昨日の彼女はいなくて。

そこにあるはずの月も、雲に隠れて僅かに光を漏らすだけで、彼女がA様であろうとなかろうと、きっともう会えない気がする。

「…はあ」

ついた溜息は、ただ虚しく風に運ばれて。

昨日はいろいろなことがありすぎた。

あなたともわからない謎の女性が現れたかと思えば消え、久方ぶりのジョングクと再会し。

『これ以上俺から何を奪えば気が済みますか？』

笑った顔をしていたけど、目は虚ろだったジョングクの表情を思い出す。

彼らに会えるわけではないことはわかっていたけど、どうしてももう一度チャンスが欲しくて。

ボゴムに頼むと、彼は笑って、女の子と遊ぶほうが楽しいから勝手にしてくれていいと言ってくれた。

これしきのことでこんなことを思う僕は単純なやつかもしれないけど、やっぱりボゴムはいい友達だ。

“あの日”、もしあなたが約束を守ろうとしてくれていたら、僕が彼に出会うことはなかったかもしれない。

こんな風に、もう一度あなたと出会うことを望めることはなかったかもしれない。

皮肉なことだけど、僕はこれでも幸せに生きているんだと思う。

・