5 TH ページ5
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あれからやっぱりA先生から連絡が来ることはなくて。
ーー「……もしかしたらおまえじゃなくて、Aが明日にでも死ぬことだってあるんだぞ」
窓の外を見つめながら、頭のなかでぼんやりとヒョンの言葉を反芻していた。
生に対する自分の諦めが褒められたものじゃないことはよくわかっていたけど、ヒョンに言われた言葉が、いやに胸にまとわりついた。
もしかしたら先に死ぬのは俺の方じゃなくてA先生かもしれない。
言われてみれば確かにそれはそうで、そう考えるとこの数日間、先生に会おうとしない俺はただの情けない奴だった。
会って謝られるのが怖い。
拒絶されるのが怖い。
本当に先生との関係が終わってしまうのが怖い。
先生の手を離してしまいそうなことが怖い。
考えれば考えるほど、見えてくるのは俺にとって先生が、誰よりも大切な存在だというその事実だけなのに。
もがいたってどうせ死ぬという諦めが、何もかもを歪めていた。
MN「……テヒョンくん。ちょっといいかな」
突然病室に響いた声に顔を上げると、そこにいたのはミナさんだった。
今にも泣き出してしまいそうな彼女の表情に、嫌な予感が背筋を走る。
TH「……どうしたんですか」
MN「……」
TH「ミナさん？」
目に涙を溜めて言葉を詰まらせるミナさんに、まさか本当にA先生に何かあったんじゃないかと冷や汗が伝う。
俺の手をとったミナさんが、いつになくその手をぎゅっと握りしめた。
MN「……お母さんが危篤なの」
目の前が、真っ暗になった。
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作者名：寧桜 | 作成日時：2022年4月29日 14時
