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JN「最近会ってないんでしょ。あの子と」
「……え？」
JN「職場復帰してから、毎日先生直帰してますよね」
「……」
JN「朝病院に寄ってきてるわけでもなさそうだし」
「だったらなに？ジンに関係ある？」
JN「ありますよ」
彼の手を振り払って部屋から出ようとすると、今度は手首を捕まえられる。
なんとなく、言われることは予想できていた。
JN「先生は俺を捨ててまであの子と一緒になったんだから」
「……その言い方はズルいよ」
JN「わかってますよ。でもこうでも言わないと、先生がまた逃げちゃう気がして」
「逃げる？」
JN「はい。これも言い方が悪かったかな。でもまあ、そういうことです」
「……」
「逃げる」という言葉に、直接言われたわけでもないのに自然と五年前の事を思い出していた。
ジンの言い方は別に恨みがましくなんかなかったけど、胸の奥がチクリと痛むのはきっと、彼の言葉に思い当たる節があるからだろう。
確かに今思えば、あのときの私は逃げただけなのかもしれない。
ジンのことを想うふりをしながら、本当は怖くて逃げ出しただけなのかもしれない。
傷つくということから。
傷つけるということから。
怖くて、目を背けただけなのかもしれない。
「……ジン」
JN「……なんですか？」
「ごめんね……」
JN「そんな言葉が聞きたくて言ったわけじゃないんですけど」
ジンはすごく哀しそうな目で私を見つめた。
彼が私を心から心配して、幸せになってほしいと思ってくれていることはわかっていた。
でもね、ジン。
「……ありがとう」
大切な人が死んでしまうかもしれないって、すごく怖いの。
大切な人が死を待ちながら生きているのを隣で見ているのは、すごく辛いことなんだ。
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作者名：寧桜 | 作成日時：2022年4月29日 14時
