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手を引かれ、横並びでベッドに腰かける。
私を見つめてはにかむ彼が、愛おしくて。
TH「……っ」
いつかの日のように、少しウェーブをうったサラサラの髪に手を伸ばす。
指を通して撫でると、キムは驚いたように目を丸めた後、優しく目を細めて私の手をとった。
TH「俺にもちゃんと、心から好きだと思える人ができましたよ」
キムがあんまり優しく笑うから。
「……っ」
どういうわけか、涙が込み上げてきて。
「絶対帰ってきて……っ、絶対……っ」
思わず彼にしがみついてそう言った。
涙がぽろぽろと彼の肩にこぼれ落ちる。
キムはそんな私を包み込むように抱きしめ、背中をさすってくれた。
TH「泣かないでよ、先生」
「顔あげて？」と、まるで子どもでもあやすような柔らかい声色で顔を覗きこまれる。
涙を拭って顔をあげると、キムの透きとおった瞳と目があう。
TH「……はい、これ」
立ち上がったキムが、ポケットから徐ろに何かを取り出す。
手渡されたのは、しわしわになった1枚の紙切れだった。
「これ……っ」
空白だったはずの欄には、「医者」と大きな文字がかかれていて。
TH「ひひ。俺、まだまだやりたいこともやらなきゃいけないことも沢山あるからさ。ちゃんと帰ってくるよ？せんせ」
未来なんて自分にはないと、そんな希望に満ち溢れた言葉なんて嫌いだと語った彼が、私さえ忘れかけていたものをようやく「提出」したの。
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作者名：寧桜 | 作成日時：2022年4月29日 14時
