19 TH ページ19
・
JN「A先生を返してほしいと思ってるなら君のことなんて見殺しにするね。大金積んでまで生き延びさせるメリットがどこにある？少しは冷静になったら？その賢い頭で考えればそんなことわかりきったことでしょう」
TH「……っ」
JN「俺はね、A先生のことを大切に想ってるけど、彼女とはもう縁を切ったの。彼女は君を選んだから」
TH「……」
JN「だからたとえ君が死んで彼女がもう立ち直れないほど傷ついても、俺は彼女には会わない。俺だって前に進まなきゃいけないからね」
A先生の話を口にするとき、彼は優しい目をしていた。
その瞳に、自分のバカバカしいプライドや意地が少しずつ溶けていく気がする。
全然反りの合わない彼だけど、なぜ俺にこんなことをするのか、だんだんわかっていく感触があった。
JN「でもそんな事態はなるべく避けたい。そのためにはどうしたって君を生かさなければならない。これはね、君とA先生のためにしていることじゃない。俺がこれから穏やかに生きていくためにしていることなんだよ」
「だから君は、生きてきちんと先生を幸せにしなさい」と、ジン先生はそう言ってアタッシュケースの口を閉じ、俺に渡した。
重い。
重い重いそれを持つ手が震えないよう、俺は必死で支えた。
唇を噛み締める。
そして深く、彼に向かって頭を下げた。
TH「ありがとうございます」
フン、と鼻を鳴らした先生は、そのまま何も言わずに病室を出ていった。
俺はいつまでも、重いケースを抱えて頭を下げていた。
こうして揃ったんだ。
俺の未来をつくるピースが。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 350人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：寧桜 | 作成日時：2022年4月29日 14時
