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「許可もらってるの？」
TH「うん、特別に」
車の中に、ふたり分の匂いがした。
それだけで私は泣きそうだっていうのに、キムはいつものように……いや、いつも以上に飄々とした顔で助手席に座っている。
TH「初めて車乗せてもらったときのこと覚えてる？映画の帰り道」
キムの言葉で、あの日やけに毒々しかった赤信号の光を思い出す。
ーー「俺のことガキだと思ってる？だからそうやって適当にあしらうわけ？」
あぁ、この子はちょっと怖いななんて思って。
必死で大人を取り繕ったな、あのときは。
「覚えてない」
TH「え？嘘じゃん」
「嘘じゃないよ覚えてないもん」
TH「あ〜、あのとき先生かなりムキになってたしね？思い出したくないよねぇ〜」
「ヤー、キム・テヒョン」
そこまで言うと、ちょうど赤信号で車が止まって思わず吹き出した。
私も、キムも。
TH「ひひっ」
久しぶりに……本当に久しぶりにその顔を見た気がした。
私の大好きな、愛おしいその笑顔。
TH「何気に名前呼ばれたの初じゃない？」
「名前？」
TH「テヒョン」
「嘘、呼んだことあるよ」
TH「ないよぉ〜〜」
しんみりしないようにと気を遣っていたつもりが、いつのまにかいつもの私たちのように軽口をたたけていることにほっとした。
あんまり悲しいことを考えるのはもうやめよう。
今日だけでも……今日だけは、ただ愛する人の隣で何気なく笑う1日にしよう。
TH「じゃあこれからはテヒョンって呼んで」
「……なんかやだ」
TH「なんで！！」
「生徒なのに1人だけ特別扱いしてるみたいで罪悪感が……」
TH「実際俺は特別じゃんかぁ！！」
「ふふ、自分で言うな」
本当、これ以上ないくらい特別な人だよ。
テヒョンア。
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作者名：寧桜 | 作成日時：2022年4月29日 14時
