頑張る奥さん冷たい旦那さん『愛蔵』 ページ1
勇次郎くんのお話の愛蔵くんバージョンのような
愛蔵くんめっちゃ冷たいっす
ーーーーーーーーーーー
ぱん、と頬を叩いて意気込みをする
ここで何をしているのかと聞かれると、愛しの彼を待っている、だ
彼が髪の長い女の人が良いと言うから髪を伸ばし、家事のできる女がいいからと家事を頑張り、控えめな女が良いと言うから所作法を頑張った
そして今は許嫁にして片想い歴2年に及んでも一向に振り向いてくれない彼、柴崎愛蔵の帰りを待っている
無駄に上達していた化粧をして、髪もいつも以上に手入れをして、一番お気に入りの着物に袖を通した
記憶の中の彼を思い出してはドキドキと胸を膨らませる
ふー.......と一息をつくと背を預けていた長屋の横から愛しい彼がやってきた
来た！と頭で理解するがいざ彼を前にして恥ずかしさが全身を支配する
「あっ、愛蔵！」
広い背中に上ずった大きな声を出す。また、やってしまった
大和撫子は大声なんてはしたない真似はしないし、常に殿方を立てるものなのです
そう言っていた家政婦の言葉を思い出す
父からも母からも兄姉からも可愛がられ育ち、敬語とは無縁で生きてきたのがここで足を引っ張る
案の定嫌そうな顔をした彼は私を冷たい目で一瞥するとまた歩き始めた
「待って！く、ださ」
「.......なに、猪女」
いつも通りの納得出来ないあだ名で呼ばれる。最近はそれに慣れてきた自分が恐ろしい
いつもは私の存在なんて居ないかのように接するから、今日は止まってくれたことが嬉しくて赤くなった顔を手で半分隠す
「あの、でその、あのね」
「用がないなら声掛けんなよ、そういうのうざい」
ぐりゅ、と心臓をえぐられる音が聞こえた気がした
練習ではかろうじて出来ていたはずの敬語も、彼を目の前にすると緊張でまるで出来ない
じわ、と目頭に溜まった涙をこする
辛い。すごく辛い。彼に限らず私に求婚してくれる男なんて沢山いるのに、なんで私はあんな冷たい人なんかに入れ込んでいるのか
しかも彼には
「悪い、待たせて」
「いいえ、構いませんわ」
恋人が、いる
私許嫁なのに.......
.......でもどうしても諦められない私はどうしてなんだろうか
ーーーーーーー
頑張ったお洒落も、お化粧も、彼の前では何も役立たない。視界に入れただけで今日は良い日
しかし数年後＿＿
「今日もAは可愛いな。どうしてそんなに可愛いんだ？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 140人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
메이 - 全部読みました.ᐟ とっても面白かったです.ᐟ これからも頑張ってくださいね𓂂𓏸 (2022年12月9日 15時) (
レス) @page49 id: 36c85dd659 (このIDを非表示/違反報告)
ソーダ(プロフ) - じゃすみんちゃさん» ひえ！全部！ありがとうございます嬉しいです(TT)更新頑張ります応援嬉しいです！！ (2022年1月23日 2時) (レス) id: babb449235 (このIDを非表示/違反報告)
じゃすみんちゃ(プロフ) - 123全て楽しく読ませていただきました！最高です！次の更新も楽しみにしてます！頑張ってください！ (2021年11月3日 16時) (レス) @page48 id: 97e0b8497b (このIDを非表示/違反報告)
ソーダ(プロフ) - 翔花さん» 全部読んでくださったのですか！？ありがとうございます！！コメントも頂けて作者は幸せです！ (2021年8月12日 18時) (レス) id: babb449235 (このIDを非表示/違反報告)
ソーダ(プロフ) - 名前さん» 神......なんどありがたいお言葉……わたしよりもあなた様が神です……ありがたや… (2021年8月12日 17時) (レス) id: babb449235 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ソーダ | 作者ホームページ：
作成日時：2019年8月30日 2時
