そのゆっくり、こいをする。5

小さな嘘 ページ36

いつぶりだろう
自分だけのご飯を作ったのは

優哉はよく食べる人だから
一人分だと量が少なくなるのは必然で
なんだか寂しい

いただきますと響く声は
どこか切なげに聞こえたのは気のせいにしよう

食器も洗い終わりお風呂にも入って
やることが無くなった

｢編集しようかな…｣

仕事で手一杯だった私は
この一年であげられた動画は4本だった

去年はもっとあげられていたはずなのになぁ

2時間ほど編集したくらいで優哉は帰ってきた

｢おかえり｣

優哉はただいまも言わずに私に凭れてきた

｢どうしたの？｣

腕が背中に回される
優哉の腕に似合わないほど弱々しい力

｢優哉？｣
｢ちょっとだけ…このままで｣

後ろにあったソファに倒れるように座った
自分の手のやりどころに困り
なんとなく背中を撫でてやった

しばらくして離れた優哉の目は少し充血していた

｢今日誰と会ってきたの？なんか言われた？｣

優哉は何か言おうとして吃った
目線を落とし次に私を見た優哉の顔は
さっきとは全然違う笑顔だった

｢同僚と呑みに行ってたんよ。話し疲れてさ…｣

作り笑いなのは分かってる
でも本当のことを聞いてもいいのか迷ってしまった

これ以上聞かないで欲しい
そう言っている気がしたから

｢そうなんだ、お疲れ様｣

言いたくないのなら言わなくていい
私が聞いても得ではないのかもしれない

優哉との間に距離を感じてしまったのも
きっと私の考えすぎだったんだ

無理やりそう思い込んだ

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