ノブレス・オブリージュ【牛島若利】

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「頑張るぞー！！！」



舞台裏だから、と小声でで行われた実行委員による掛け声だったが、文に起こすなら！が着くような勢いを確かに感じた。


それほど、思いが強いのだろう。



出番は次だ。と舞台袖で前のグループのパフォーマンスを見守る。

大量の観客を逃がさないように、とダンス部多めで構成された第1グループ。作戦が功を奏したのかあまり人は減っていないように見える。



「ただでさえ緊張するのに、現役ダンス部の後はハードル高いって…」




弱音をこぼす凛にきっと大丈夫だよ、と返事をした所で自分の声が震えていることに気づいた。



ダンス部に技量で勝てるわけが無い。

ならば魅せ方を工夫するのみ。稚拙な技ではなく表情をそして空気感を作って観客に伝えるのだ。




「いつでも胸を張って顔を上げていなさい。」



そう教えられたのはいつのことだったか。
気持ちを作る上で大切なこと。人前に出る上での基本。私の身体に染み付いた姿勢。




…
音楽が消え、照明が消える。
リハーサルで確認した位置につき前を見据える。


暗闇のためまだ認知はできていないがたくさんの人達がこちらを見ているであろう。
後輩くんたちも、いるのだろうか



実行委員の合図とともに照明がつき音楽が流れ出す。


自分の魅せ方、それは私が1番理解している。
観客に見せつけてやろう。そう思ってからは無我夢中で。




自分のグループの番が終わり、体育館の舞台裏近くに設置された簡易更衣室で制服に着替え直し、また舞台にとんぼ返り。








舞台が終わって、拍手を沢山受けた。
幕が下りるその時に見えたのは。あの二人組の姿だった。

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