ノブレス・オブリージュ【牛島若利】

＊ ページ37

ガチャ


鍵を開けてドアノブを引くと音がよく響いた。
久しぶりの我が家に少し安心感を抱きながらまた日常が戻ってくることを実感する。


簡単に荷物の整理を行って、一息つき鞄から写真を出した。

日本についてからの帰り道。最後に撮った写真を凛がコンビニで印刷してくれたのだ。


楽しかった思い出はスマホだけに残さずちゃんと持っておくべき！という彼女の言葉を思い出すと同時に、修学旅行で出来た思い出が頭を巡る。

今帰ってきたばかりなのに感慨深くなるのには少し早いかな、と思いながらも写真を見ているとついそうしてしまうのだ。

お昼ご飯の時に作ったSNSのアカウントはもうフォロワー1000人を超えていてクラスの人達と撮った写真を投稿するとどんどんといいね！の数が増えていく。


わざわざコメントまでしてくれる子達にレスを送ると画面を閉じた。






そしてもう一度、手元の写真に目をおとす。



そういえば昔貰ったフォトフレームがあったことを思い出し引き出しを開けていく。


よかった。写真のサイズもぴったりね。


何度も行った場所でも、皆で行くと全然違った。楽しかった。楽しい修学旅行だったと胸を張って言える。



自室の机に写真とスマホを置き横の鏡を見ると、気付かぬ間に私は微笑んでいた。


自分が笑顔の写真を見ると最後に告げられた彼の言葉も一緒に思い出してしまって、思わず顔を背け部屋を出る。









…さて、夜ご飯にしよう。






…
後ろではスマホのランプがチカチカと点滅していた。




message:_toru_さんがあなたの写真にいいね！しました。

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