ノブレス・オブリージュ【牛島若利】

＊ ページ4

…

始業式という日は大抵顔合わせやプリントの配布で一日が終わる。

よろしくねーなどとやりとりが交わされる教室の中、私は皆よりひと足早く教室を去ろうとしていた。



そう、去ろうとしていたのだ。



とんとん


プリントを鞄にしまい、席をたとうとしたその時だった。


「お前、学級委員に本当に立候補しようと思ってたのか？」




不意に肩をつつかれ振り返るとそう彼が私に問いかけてきたのだ。


「もちろん。立候補しなくて済んでラッキーだったよね」



彼はどういう意図を持ってその問いを私に投げかけたのだろうか。


今まで何かと頼まれ事を引き受けてきたがお礼を言う人はいても本当に良かったのかなどと聞いてくる人はいなかった。ましてや、全てが決まった後に。

不思議な人だ。



「そうか、初対面で失礼した。俺は牛島若利だ。1年間よろしく頼む。」



「うん、気にかけてくれてありがとう。一条Aです。よろしくね」




こんな普通にやりとりが出来たのは久しぶりでなんだか嬉しくなってしまう。


普段は皆、私を何か違う人として接してくるから、ね。同じ人間なんだけどなぁ。



「わっかとしくーん！あの一条さんと何話してんのー？あっ！俺は天童覚ね、若利くんと同じバレー部〜1年間よろしくね一条さん！！！」




「ふふっ元気良いね。天童くんも1年間よろしくね」


2人と軽く挨拶を交わし、学園を出る。




…なんだか、今日はいつもよりだいぶ騒がしい顔合わせになったなぁ。

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す