08#氷上の言葉 ページ10
(Side,勇利)
今やってるのはスケーター特集。
女子のジュニアスケーター、
A=プラネルト・ペトリーシェヴァ。
あの子の演技には誰にも出来ないような“表情”がある。
この前の大会の時も圧巻だった。
加点をトコトン狙ってくる。点数には貪欲。
僕をトイレで怒鳴った、
ユーリ・プリセツキーとは仲良しらしい。
「はぁ……」
「A=プラネルト・ペトリーシェヴァ?
この子すごいわよねー」
「先生も気にしてたの?」
「勇利、あんたこの子との写真撮ってたじゃない」
「え?」
「彼女のSNSに上がってたわよ」
そう言って見せられたのは彼女のSNS。
確かに僕と彼女にはツーショットがあった。
「あー、全く覚えてない……です」
「えぇ!?」
幼少期からスケートをしていた彼女は、
ヴィクトルが一目置くという選手だ。
外国人の人にしてはひどく華奢な体躯をしていて、
その小さな体で表現される彼女の世界は、
とても壮大で鮮烈なものだ。
「天使、か……」
「妖精に天使……。ロシア選手は化物ね」
「……」
自分よりも全然年下なのに、能力はそれ以上。
持って生まれた才能が違う。
――貴方には貴方の才能がある。
――勝生勇利。貴方には退屈を覆す、人を魅せるステップがある。
誰、だったっけ。
とても綺麗な英語でそう言ってくれた人。
――私、貴方の演技好きよ。見てて飽きない。
――だから、辞めないで。もっと魅せて。
「あ……!」
「?」
「A=プラネルト・ペトリーシェヴァだ。
そうか……あの子だ!!」
「急にどうしたのよ」
「ちょっと思い出して」
彼女の言葉。
とても温かいものだった。
(ヴィーチャ、こっち)
(何でそんなに知っているんだい!?)
(日本は得意だもの)
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作者名:化野燎 | 作成日時:2017年6月11日 19時