02#追求しない訳 ページ4
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解熱剤を飲んでしばらく休んだAは、
ある程度回復したらしく、バンケットに姿を現していた。
『ユーラチカ』
「んだよ」
『私、自分で歩けるよ』
「ヤコフが倒れて怪我でもしたら困るっつってんだよ。
大人しく車椅子乗っておけ」
『……ダンスしたかったのに』
「もうしばらく休んどけよ」
ユーリに車椅子を押され現れたAに誰もが驚いた。
そして、わらわらと集まってくるスケート仲間。
「A、どうしたの!?」
『ミラ……』
「コイツ、熱あんのに試合で最高得点出しやがった」
「え、そうだったの!? もー、無理しないでよ!」
『もう平気だよ。薬飲んで熱は下がったから』
Aはそう言って笑うと、ミラの手を握り返した。
そして、彼女と別れるとユーリが飲み物を手渡した。
「飲むだろ」
『うん、ありがと』
「ふん……」
すると、ヴィクトルが姿を現した。
Aの車椅子の高さに合わせて屈んだ。
「具合はどうだい?」
『おかげさまで。ねえ、ヴィクトル。
他の人も話したそうにしてるからそっちに――』
その言葉は言いきる前に止められた。
ヴィクトルの手がAの顎を持ち上げていた。
『ひっ……』
「俺はAと話したいんだよ。
プログラムの話も聞きたいな」
『えっ、あ、うん……わ、分かった』
すごい勢いで写真を撮られている。
Aは辺りに目を回せなかった。
「端に避けるぞ」
「ユーリは他のとこに行っててもいいよ」
「はぁ!? お前とAのこと二人に出来るかよ」
「少しだけだから」
「チッ……」
Aが他の選手と話している間に、
ユーリはいつの間にかいなくなっていた。
『あれ……? ユーリは?』
「少し外して貰ったよ」
『そう』
「……ねえ、どうして4回転に挑戦しないんだい?」
『ヤコフがダメって言ってるのもそうだけど、
私はクワドが無くても今こうして勝てるもの。
ヴィクトルは知ってるでしょ?
私、“負けない”から』
「ふふっ……そうだね」
二人が知り合ったのはAがもっと小さな頃。
ユーリより一足先にスケートを始めていたA。
幼い頃から突出していたAはすぐに目に留まった。
「本当に、君は掴み所がない」
(A〜!)
(クリス!)
(ドレス似合ってるよ。ウサギも可愛い)
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作者名:化野燎 | 作成日時:2017年6月11日 19時