漆黒少女 ページ28
『お父様!』
二人が組み合ったままこちらを見る。
『私は、もうお父様の所へは戻れません!
だって、人の温もりを知ってしまったから。くだらないことで笑い合える幸せを知ってしまったから。どんなに弱くても見捨てないでいてくれる人達と出会ってしまったから。
この日常を手放したくないんです!』
「…へぇ、お前、俺に歯向かうんだ」
『っ…!』
身体中を戦慄が走る。
怖くない。
そう自分に言い聞かせるも、足がすくんでしまう。
長年かけて染み付いた従順さはそう簡単に抜けてくれない。
「翼、大丈夫だ」
『恵くん…』
恵くんの一言で、嘘みたいに血の気が戻っていく。
その声は、優しくて、温かい。
魔法みたい。
そっと歩み寄って、二人の手をとる。
これがきっと、私達家族の最後の思い出。
『ありがとう、恵くん。ありがとう、お父様』
どんなに辛いことがあっても大丈夫。
きっと今なら告げられるから。
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ノンノン(プロフ) - 紅葉さん» 返信遅くなって申し訳ありません。面白いと言って頂けて嬉しいです!更新頑張ります!! (2020年1月26日 14時) (レス) id: 4f5d0a225d (このIDを非表示/違反報告)
紅葉 - とっても面白いです!!これからも頑張ってください (2020年1月8日 13時) (レス) id: a96e485a5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ノンノン | 作成日時:2019年12月16日 17時