君をさがしてた。episode3 …2 (ページ42)

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広臣「……ちがう。」

仕事だったからじゃない。
あの時、一瞬で思い起こされたんだ。

「なにが違うんですか？」

首を傾げて聞く無知で鈍感なこの女の笑顔を思い出して。

広臣「A、覚えてるか？…初めて2人が話したときのこと。」

俺と隆二より一足先に三代目に加入する事が決まっていたA。
VBAの合格を告げるときに俺たちと電話することが決まっていたんだろう、受話器から聞こえた緊張気味の綺麗な声。

会話したのなんてほんの数秒だけだし、衝撃を受けたのはきっと俺だけだったから、そんなの覚えてるわけないだろう。

そう分かってても、聞かずにはいられなくて。

だけど。

「覚えてます。忘れません、あれは」

広臣「え…？」

Aが言った言葉に胸が高鳴る。

広臣「お、覚えてんの？」

「はい。」

意外な答えに戸惑う俺の目をしっかりと見て、ゆっくりと一呼吸置いた後、Aが言葉を続けた。

「あの日私はHIROさんに、VBAの最終選考の会場に来るように言われてました。

…でも間に合わなかったんです。
私、前日までベトナムにいたんですけど、帰りに乗るはずだった飛行機が台風で欠便になってしまって…。

そこで急遽、合格者の二人と電話で話す事になりました」

広臣「べ、ベトナム…」

「トムヤムクンが食べたくて」

広臣「タイ料理じゃねえの？」

「そうだったみたいです…でもベトナムにもありました」

広臣「そ、そう…」

「……」

広臣「…続けて？」

「空港で帰りのキャンセル便を待っていた私の元にまずメールが届きました。
私…本当申し訳ないんですけど VBAの途中経過とか全然知らなくて

…そこで初めて、合格者2人の名前と年齢を知ったんです。

そして程なくして着信が入ってきて。

私心のどこかで、ATSUSHIさんのような鍛え抜かれた良質な声を期待してたんです。
だから、初めてあなた達の声を聞いた時愕然としました…

でもそれと同時に、少しだけワクワクしたんです。
未熟で、まだプロとも程遠いその声の持ち主を何故HIROさんやATSUSHIさんが三代目のボーカルに選んだのか…なんとなく分かった気がした。」

広臣「何でだと思ったの？」

「初めて聞いたときから…

私の頭の中に、3人でステージに立つビジョンが湧き出て消えなかったからです」

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