君をさがしてた。episode3 …2 (ページ24)

今日:14 hit、昨日:41 hit、合計:3,720,217 hit

④-5 ページ24

5

「お帰りですか？」

静かに言うバーテンに返すことなくお金をその場に置いてバーを出る。

(どうすりゃいいんだ…)

百合根のあの感じじゃ、今にも情報をリークしそうな勢いだった。

スパイラムホテルのロビー外に停まっていたタクシーに乗って自宅の住所を伝え、スマホをポケットから取り出す。

(HIROさんに相談するか…？)

いや、だめだ。
これは全部俺が蒔いた種だから、会社にもメンバーにも迷惑はかけらんねえ。
もう週刊誌の事で随分迷惑かけてしまったが、だからこそこれ以上は…

それに、頭をよぎるのはやはりAの顔。
自分の過去の事でHIROさんやAKIRAさん…皆に迷惑かけたと知った時の顔。
傷付いて、苦しんで、もしかしたら自らHIROさんや三代目の元を離れる決断をするかもしれない…

(俺一人で…)

誰にも知られず百合根を止めたい。
でもそんな事は出来るのか？

pipipiーー…

手に持っていたスマホが鳴り、画面に映った名前は

(隆二…)

いつも一緒にいる相方だった。

俺は一瞬電話に出るのを躊躇った。
今、隆二と話してて平常心で入られる自信がない。
隆二はメンバーで唯一、俺のAへの気持ちに気付いてる。
だからこそあいつは何も言わないでいつも俺の側に居てくれたけど、Aと歌うことは本当に楽しそうだったし、音楽に実直な彼にとっては、ボーカルの険悪な空気は本当は嫌だったんだろう。

それでもAより俺を支えることを選んでくれた彼に、俺は嘘をつくのか？
百合根との事を隠して、隆二の前では何もないフリをして一人で解決しようとしてんのか。

誰にも迷惑をかけたくない、でも仲間を信じたい。

…頼りたい。

でも、やっぱり…、

そうこう考えてるうちに、遂にコール音は途切れた。

.