君をさがしてた。episode3 …2 (ページ21)

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百合根とホテルで朝を迎えたあの日から、俺は彼女を避けるようにこの居酒屋に来るのを控えていた。
ここにさえ来なければ百合根に会うことはない。
でも裏を返せば、ここに来れば彼女に会える。

(俺は、それを分かっていながら今まで何度も…)

百合根を薄気味悪いと思いながらも、Aについて特にイライラした日は必ずと言っていいほどこの店に来ていた。
この店に俺が来れば必ず彼女も現れると分かっていたのに。

…分かっていたからこそ。

(俺は百合根の気持ちを利用していたんだな。)

自分に好意を寄せてくる女をいいように使って、思い通りにいかないAへのイラつきを解消していた。

(最低だろ…)

健二郎さんに言われた通りだ、今回の事は全て俺に責任がある。
彼女の気持ちを暴走させたのは間違いなく俺だ。

俺が会うのを避けていた2ヶ月間、いや、本当はもっと前からか？
きっと百合根は俺にほど近いAに対して並々ならぬ敵意を燃やしていたんだろう。

百合根の気持ちを考えると、申し訳ないという思いもなくはない。
でも関係ないAやメンバーを巻き込む事だけは本当にやめてほしかった。

店に来て一時間が過ぎた。
いつもならとっくに百合根が現れる時間だが、今日はまだ姿を現さない。

(……)

スマホを手に取りディスプレーに表示させる、百合根美和の連絡先。
今まで一度だって連絡を取ったことはなかった。

でももし今日ここに彼女が来なかったら、彼女を止めようとする俺の思いが揺らいでしまうかもしれない。

pipipiーー…

電話番号をタップすると程なく通話画面に切り替わる。機械の向こうで聞こえるコール音。

そして、5回目のコールの後。

『…もしもし、』

広臣「百合根、か…？」

『…やっと連絡してくれたわね、広臣さん』

電話越しでも彼女の口角が怪しく上がっているのが分かる。

広臣「アンタ今どこにいる」

『どうしてぇ？』

広臣「話たいことがある…」

『……いいわ。一時間後にスパイラムホテル17階のラウンジバーで会いましょう？』

2ヶ月前に俺と百合根がハシゴしたバーだ。

広臣「わかった。」

それじゃあ待ってます。という百合根の言葉に返事することなく通話を切った。

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