君をさがしてた。episode3 …2 (ページ3)

今日:2 hit、昨日:43 hit、合計:3,720,076 hit

③-14 ページ3

14

隆二「俺と臣がVBAの最終審査を合格したあの日、俺たちはもう一人のボーカルの存在を知らされました。」

他の候補者が去り、デビュー曲のレコーディング日程を知らされたあのタイミングで、HIROさんに手渡された一本の電話。

隆二「電話越しに聞こえてきた女の子の小さな声。…それが、俺たちがまだ出会う前の Aとの初会話でした。

俺はぶっちゃけその時のことはあんま覚えてなくて笑まだJSoulに選ばれた実感も沸いてないのに、3人目のボーカル、しかも女の子って事だけで頭ん中パニックで…

でも臣が感じたことは、俺とは少し違ってたみたいです。

Aとの電話を切ったあと、臣は確かにこう言いました。

『今まで聞いた声の中で、一番好きなやつだ…。

早くこの子に会ってみたい。』って。

臣は多分その瞬間、声を聞いただけで自分でも知らぬ間に Aに“好き”に近い感情を抱いたんだと思います。

一目惚れよりもブッとんだ事って思うかもしれないですけど、あの場に居た俺にはわかる。

臣は人生で初めて、心で感じる相手にその時出会ったんです。

だから臣は、Aに会うことを凄く楽しみにしてました。レコーディングスタジオに向かう車の中でもずっと『やべーやべー』言ってて笑
俺が曲に集中しろよ。って軽く注意するくらい、あいつの中じゃどんどんAの存在が膨れ上がっていってました。

でも…、Aとの初対面は、臣が想像してたものとは違った。

その時の事は俺も鮮明に覚えてます。
レコーディングスタジオに入ると、先に来ていたAがマネージャーさんに呼ばれ俺らの方に寄ってきて。

思っていたよりも華奢な彼女は、まず俺に握手をしてきました。愛想笑いだったんだろうけど、しっかり笑顔も見せて。ちょっと可愛いなって思いました。

でも、次に臣の顔を見た瞬間、Aの顔が一気に強張ったんです。
俺も臣も、その表情の変化に呆気に取られて…Aは震える手を差し出して確かに臣と握手を交わしたけど、その顔に笑顔はありませんでした。

俺らとAの間に微妙な空気が生まれたままレコーディングは進み、そしてそれが終わると、Aは逃げるようにスタジオを後にしました。」

.