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「本命…？」
剛典「俺にここまでやらせといて、居ませんはなしだからね」
Aは俺の目を見てパチクリと瞬きし、丸く転がしていた生地を手のひらで伸ばしながらじっくり考えた後、
「…いません。」
剛典「おい」
「好きな人って、…ことですよね。本当に いない。」
剛典「はあ？本当に？ーーって、何してんの健二郎さん」
拳を高らかに挙げ天井を仰ぎ見ながら、「う、嬉しいけど…！複雑や…っ」と呟いている。
目の前の彼にここまでされても当のAは無表情。それどころか一瞬たりともそちらに視線を向けない。こいつこれ意識してやってるとしたら相当なドSなんだけど。
剛典「本命もいないのにわざわざ当日の夜に作ってんの？」
「うん。亜嵐が私の手作り期待してたみたいなので」
健二郎「亜嵐…」
ELLY「…ーーお前は今から、亜嵐、だーっ！」
健二郎「うぉぉお ラブリ姉さぁぁん！」
ELLY「やばあww」
剛典「…おーい。笑」
ELLYにスプーンでビシっと指されたのを合図に亜嵐のモノマネ(似てない。)を始める健二郎さん。
俺は面白いと思うけど、Aは少しも笑わない。
剛典「その亜嵐が本命じゃないの。」
「…ハート形にしたほうが良いのかな……？」
剛典「知らないし。てか質問の答えになってない、亜嵐が本命？」
「違う。いません。」
そこはキッパリと否定するA。
バレンタインを作るって知らされてから今まで引っかかっていた何かが、その時すっぱりなくなった。
本当なんなの。
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作者名：とまと野郎
| 作成日時：2014年11月16日 0時
