君をさがしてた。episode1 (ページ21)

今日:21 hit、昨日:24 hit、合計:2,188,064 hit

①-19 ページ21

19

健二郎(はあ…もう早よ終わってくれ…)

こちらブルーな気持ちの健二郎。

何分かに一度捕獲者が増えるたび、どんどん健二郎の空気は薄くなっていく。やんややんやとうるさいタレントの中で、アーティスト山下健二郎は完全に埋もれていた。

途中隙を見て得意のモノマネを披露したかったが、どうもこの狭い牢獄の中ではそういった流れも生まれない。

健二郎(泣きそうや…)

今日一で健二郎の気分が沈んだ、ちょうどその時。

藤本「誰か来たんちゃう！？」

藤本の叫びで皆がそちらに注目する。健二郎は(ゴリさんか的場さん辺りやろ)と面白くなさそうにぼんやりと見えるシルエットに目を凝らした。

(………？！なんで、お前が来んねん…！)

視線の先には、ピンクのベストを着た女性の走り姿。
眉間にしわを寄せ、息も切れ切れに走ってきている。

小藪「香椎さんやない？！」
濱口「なんでぇ？！」

「ハァッ…ハァッ…！あの、これ、…っ鍵…ッ」

Aの手にしっかりと握られていたのは紛れもなく牢獄解放のための鍵。

小藪「鍵持ってきたんか！誰？誰解放すんの？」

健二郎(なんのつもりや、A)

膝に手をついて息を整えているA。そしてゆっくりと人差し指を上げていき、その真っ直ぐ先に健二郎を捉えた。

「山下…健二郎を…。」

「「「「オォオオ！」」」」

健二郎「なんでや…」

ケンコバ「メンバーだからやんか！めっちゃええ子！」

濱口「むっちゃ格好ええやん！感動するわっ」

今日一で沸き立つ牢獄。ポカンとする俺をみんなが囃し立てるように牢獄から追い出した。

健二郎「なんでなん…」

「それが一番いいと、判断したからです」

健二郎「どうゆう意味や…」

「一人で生き残るより、2人で生き残ったほうが三代目的には “美味しい” んでしょう」

健二郎「お前それは欲張りってもんや。」

「なにが欲張りでなにがそうじゃないのかは私にはよくわかりませんから。」

淡々と言うAに拍子抜けする俺。

そして軽く息を整えると、カメラの前で形式的に俺と拳を交え、颯爽と走り去っていった。

ムカつくけど、なんか格好ええやん。