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「探るって…?」
九重が問うと、三日月は笑う。
「先程の袋は、まだ新しいもんだ。恐らく売買からそう経ってない。だから前足を探って、映っていれば」
「あ…売人を特定できる!」
陣馬が代わりに答え、九重が答えを導き出すと、三日月が補足する。
「まぁ彼が話すとは思うが、繋がっていくこともあるからなぁ。例えば別件を追っているときに、行方不明の誰かを見つけることもある」
行方不明の誰か。
九重の脳裏に、成川岳の最後の姿がよぎる。
「…どうして、公務執行妨害で逮捕に持ち込まなかったんですか」
不意に零れ落ちた言葉。
「出来ましたよね、あの状況で。わざわざ、あんな回りくどいことをしなくても逮捕できた。調べれば覚醒剤の所持は後からでも分かる」
三日月は九重を正面から見据える。
「それは、今じゃなければならないか?」
九重ははっとして答えた。
今までずっと、犯罪者と対峙したときでさえ穏やかな雰囲気を纏ったままで、笑みを絶やさなかった三日月の瞳が、スッと冷えていくのを感じた。
表情も、声色も、変わっていないのに。
「いえ…」
気まずそうに足元に視線を落とす九重に、三日月は肩をぽんぽんとたたいた。
「ふふ、いいよ。分からないことを聞くのを最近の子は出来ないというから、それよりずっと良い。休憩時間にでも答えるさ。それまでは引き続き密行を頼む」
さて、と言って三日月は辺りを見渡して、防犯カメラを探すと、いくつかの店に当たりをつけて映像を渡してくれるように交渉しに行った。
九重が車に乗り込むと、陣馬は既に助手席に座っていた。
「ドーナツEP…バシリカ高校の、削除された名簿と繋がるんでしょうか」
「俺たちの仕事は99%無駄だ」
でも、と陣馬は続ける。
「三日月は99.9%無駄だと言われてもやる。そのお陰で救われた人間は多い。特に未成年」
【社会全体でどれだけ掬い上げられるか。5年後10年後の治安は、そこにかかってる】
先程の青年と、桔梗の言葉。
「どうして隊長があの人を引き入れたか……少しだけ、分かった気がします」
ギアを入れ換えて、アクセルを踏む。
三日月が今話すことを拒んだ理由。
それは、少しでも早く防犯カメラの映像を解析して、潜んでいる驚異を見つけるため。もし映像のなかで誰かを見つけられるなら、一刻でも早く見つけ出して追うために。
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ルーツ(プロフ) - イマツギさん» コメントありがとうございます! 書き留めていたものをちょくちょく投稿していこうと思っています! 一挙放送楽しみですねぇ(*^-^) (2020年12月28日 17時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
イマツギ(プロフ) - 早く続きが見たいですね!更新頑張ってください! (2020年12月28日 3時) (レス) id: e522761e6b (このIDを非表示/違反報告)
ルーツ(プロフ) - みかさん» ご愛読していただいてありがとうございます…! 遂に三日月が自分でひいていた境界線を打ち消して一歩前進しました。この話、終わるまで長くなっちゃいそうです(笑)。気長にいきますね! (2020年9月12日 12時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
みか(プロフ) - ルーツさん» 凄い、好き、好きです…!!(語彙力)ドラマは終わっちゃったけど、ほんと、、この小説好きで、ずっと続いて欲しい((。良かった、境界線は、ただの線だもんね…乗り越えられて良かった… (2020年9月6日 21時) (レス) id: 72afcfd334 (このIDを非表示/違反報告)
ルーツ(プロフ) - みかさん» そう言っていただけると嬉しいです…!! 遅いながらも暇を見つけてちまちま更新していくつもりです! まだしばらく暑いみたいなので気を付けないといけませんね…(苦笑) (2020年8月25日 20時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルーツ | 作成日時:2020年3月9日 19時