ADVENT CRIMINAL【MIU404】

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次第に強くなっていく雨が､九重と三日月を等しく打ちつける｡

「さて､私は桔梗さんの家に寄らなければ」
「送ります､夜に女性の一人歩きは」

九重は三日月の背後にゆらりと動いた影に､目を見張った｡

「三日月さんッ!」
「ふッ!」

動いた影からのびた腕を寸でのところでかわす｡
そのまま三日月は振り返り､鳩尾に一発｡
呻いたその男の肩を掴み､鳩尾に膝をめり込ませようとした三日月は､直後に肩から手を離した｡

「――――どういうつもりかな､伊吹」

崩れ落ちてえずく伊吹の背中を摩ってやり､三日月は尋ねる｡

「いや､見かけたから､つい…」
「ついって君ねぇ…私じゃなければ両手が後ろに回っているところだよ?」
「隊長に報告ですね､任せてください」
「後生ですやめて九ちゃん｡俺車で来てるからさ､二人とも送ってくよ」

その伊吹の提案をのんだのは､意外にも九重だった｡彼曰く､三日月が変に遠慮しないためには､伊吹のようなしつこさと､周りの人間の図々しさが必要なのだそうだ｡

助手席に座った三日月を､伊吹は運転席からにまにまと眺めた｡

「似合ってるね､その服」
「そうか､東海林が選んでくれたものだから､後日東海林に伝えておくよ」

そうじゃない､といいたげな伊吹に､九重は後ろから伊吹の肩をポンと叩いた｡

「伊吹号､しゅっぱーつ!」

ハンドルを切る伊吹の横顔を､三日月はなんとなく見つめていた｡世の女性は､伊吹のような顔立ちをイケメンというのだろうな､なんて思いながら｡

「そういえば､三日月さんが合コンなんて意外でした」
「はは､まさかいるとは思わなかったけれどね｡…私もそろそろ適齢期だし､出逢いを求めた方がいいのかと思って」
「えッ…」

目を丸くして三日月を見た伊吹に､三日月は首をかしげる｡そして何かに気が付いたように肩を跳ねさせて､すいと窓の外へ視線をやってしまった｡

そういうことか､と伊吹は腑に落ちた｡
今日の三日月はなんだか女性らしさがある｡
服や化粧のせいだけではない､話し方も､所作もだ｡いや､彼女の場合今までが出逢いや恋愛に無頓着過ぎたのかもしれないが｡

「…まぁ､今回で､ああいった場は私には向かないと分かったよ｡もう行かないから､」
「変とか､思わないよ」

どこか投げやりな言葉を並べる三日月は､優しさを含んだ伊吹の声に肩を震わせた｡

「ごめんね､さっきのはちょっとびっくりしただけ｡……泣かないでよ」
「…馬鹿を言わないでくれ､誰が」

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