. ページ31
「あっ､ミカゲさん居るやん! ミカゲさんあの喫茶店めっきり来なくなって､会いたい思っとったんですわ」
「すまんなぁ本業が忙しくて｡元気にしていたか?」
関西の訛りで話し掛けてきた男に､三日月は笑う｡隣にいる東海林に先に行くように促すと､彼女は会場となる綺麗な建物の中に入っていった｡
合コンと言っても､学生の合コンとは違って､東海林のいう異性間交流会という名は適切なように思える｡
スリットの入ったシンプルな黒のロングドレスは､普段の三日月ならば絶対に着ないだろう｡実は､東海林が勧めてきた衣装のなかでこれを選んだのは､機動力を確保できそうだからであった｡
「よく私だと分かったなぁ､私にしては珍しく､随分めかしこんだと思ったが」
「ミカゲさんほど綺麗な人他におらんですもん､分かりますって」
「相変わらず世辞が上手いなぁ」
穏やかな雰囲気は､以前の三日月のものだ｡
それはすなわち､誰にも隙を見せまいとしている状態を表す｡
「お世辞ちゃいますよ」
「君からしたら私はおばさんだと思うがなぁ」
三日月は目を細めた｡
「本当に物好きなことだ､五味くん」
*
「ミカゲさんが合コンくるん意外ですわ」
「なに､私ももう歳だからな｡良い縁が欲しいのさ」
五味と名乗る男は､合コンに飛び入り参加した｡
明るい関西弁で､するりと空気を持っていき､三日月の隣を陣取り､他の男を寄せ付けないようにするその様子に､東海林は口許を緩ませた｡
「(あれはイケるかも…Aが相手を男として見てないのが問題だけど｡さて､私の方は)」
東海林は内心うんざりしていた｡
東海林が連れてきたとあって､自分の周りには三日月に声をかけられなかった男が､少しでも彼女のことを知ろうと話し掛けてくるばかり｡
まぁ､こうなるのはわかってたけどさ｡
三日月は普段､最低限のマナーとして薄く化粧はするが､女らしく飾ることはしない｡顔色を隠すためだけだと聞いたときには激昂した｡良い素材してんのに勿体ない､と｡
周りの男が三日月を綺麗だ､美しいという度に､東海林は心のなかで「私がコーディネートして私が化粧したんですよ!! うちの三日月A美人でしょ!!」と叫びたい気持ちになる｡
「ミカゲさん､ケータイの番号も教えてくれへんし」
「ははは､だがこうして会えたのだ｡縁があれば会えるものだろうさ」
五味と三日月の会話に東海林は首を傾げる｡
三日月が連絡先を教えない､ということに､違和感を覚えたからだ｡
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 271人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「二次創作」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルーツ(プロフ) - イマツギさん» コメントありがとうございます！ 書き留めていたものをちょくちょく投稿していこうと思っています！ 一挙放送楽しみですねぇ(*^-^) (2020年12月28日 17時) (
レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
イマツギ(プロフ) - 早く続きが見たいですね！更新頑張ってください！ (2020年12月28日 3時) (レス) id: e522761e6b (このIDを非表示/違反報告)
ルーツ(プロフ) - みかさん» ご愛読していただいてありがとうございます…! 遂に三日月が自分でひいていた境界線を打ち消して一歩前進しました｡この話､終わるまで長くなっちゃいそうです(笑)｡気長にいきますね! (2020年9月12日 12時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
みか(プロフ) - ルーツさん» 凄い、好き、好きです…！！(語彙力)ドラマは終わっちゃったけど、ほんと、、この小説好きで、ずっと続いて欲しい（（。良かった、境界線は、ただの線だもんね…乗り越えられて良かった… (2020年9月6日 21時) (レス) id: 72afcfd334 (このIDを非表示/違反報告)
ルーツ(プロフ) - みかさん» そう言っていただけると嬉しいです…!! 遅いながらも暇を見つけてちまちま更新していくつもりです! まだしばらく暑いみたいなので気を付けないといけませんね…(苦笑) (2020年8月25日 20時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ルーツ | 作成日時：2020年3月9日 19時
