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「マジで急いでんだって!」
「それはすまない、でも止まって話を聞いてくれてありがとう」
明らかに挙動不審な青年に、陣馬と九重はアイコンタクトをした。この青年はシロではないだろうと。そして大抵こういう時は。
「危ないものは、持ってないですよね?」
「持ってねぇよ」
「九重、ボディチェック」
クスリを、持っている。
陣馬のボディチェック、という言葉に青年の顔が青ざめる。逃げようとした青年を、三日月は引き留めた。振り向きざま殴りかかろうとした男の腕を掴んで、三日月は男の目を真っ直ぐに見つめた。
「誰かを傷つけるための手足じゃないだろう」
言い聞かせるようにいう三日月に、青年は目を見開く。
三日月を殴っていれば、この男を公務執行妨害で署に連れていくことが出来ただろう。
でも三日月はそれをさせない、その手をもって人を傷つけさせない。
「近付かないで下さい、離れて!」
九重が一般人を離れさせ、陣馬が本部に連絡を取る。
「なぁ、もうやめよう」
「っあぁあ!!!」
暴れる青年を抱き締めて、もうやめようと言い続ける。
覚醒剤の作用。
幻覚、幻聴。薬が切れると、落ち着かない。
それらから逃れるためにまた薬に溺れる。
途方のない、終わりのない地獄。
何もかもが、怖い。
嗤われているんじゃないか、殺されるんじゃないか。一人が怖いのに、一人じゃないと安心できない。
「なぁ、自分を傷つけるの、やめよう」
暫く暴れた青年は、やがて三日月の肩に頭を押し付けて、すがるように泣き始めた。
青年の背を撫でながら、彼女は語りかける。
「辛かったなぁ、苦しかったなぁ。クスリ貰うにも、怖い思いをしたなぁ」
「渡してくれるかな、君を苦しめるもの」
抵抗も、なにもしない青年に、三日月は九重を呼ぶ。ポケットを調べると、トローチのようなものが入った小さな袋が出てきた。
ドーナツEPだ。
「9時44分、クスリの所持、覚醒剤取締法違反で現行犯逮捕」
手錠をかけた三日月は、虚ろな目をする青年を応援に駆け付けたパトカーに連れていく。
既に陣馬が事情を話して引き継いでくれたらしく、あとは任せてくださいと言われて、三日月は警官に頭を下げた。
「よろしくお願いします」
青年は、パトカーに乗る前に、深く頭を下げた。
「どうか…自分の身体を、大事にね」
それだけを言って、三日月は九重と陣馬のもとへと戻る。
「周辺の防カメのデータを貰って解析する」
「探れそうか?」
「…やってみるよ」
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ルーツ(プロフ) - イマツギさん» コメントありがとうございます! 書き留めていたものをちょくちょく投稿していこうと思っています! 一挙放送楽しみですねぇ(*^-^) (2020年12月28日 17時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
イマツギ(プロフ) - 早く続きが見たいですね!更新頑張ってください! (2020年12月28日 3時) (レス) id: e522761e6b (このIDを非表示/違反報告)
ルーツ(プロフ) - みかさん» ご愛読していただいてありがとうございます…! 遂に三日月が自分でひいていた境界線を打ち消して一歩前進しました。この話、終わるまで長くなっちゃいそうです(笑)。気長にいきますね! (2020年9月12日 12時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
みか(プロフ) - ルーツさん» 凄い、好き、好きです…!!(語彙力)ドラマは終わっちゃったけど、ほんと、、この小説好きで、ずっと続いて欲しい((。良かった、境界線は、ただの線だもんね…乗り越えられて良かった… (2020年9月6日 21時) (レス) id: 72afcfd334 (このIDを非表示/違反報告)
ルーツ(プロフ) - みかさん» そう言っていただけると嬉しいです…!! 遅いながらも暇を見つけてちまちま更新していくつもりです! まだしばらく暑いみたいなので気を付けないといけませんね…(苦笑) (2020年8月25日 20時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルーツ | 作成日時:2020年3月9日 19時