. 気分を害する可能性があります ページ21
「私と陣馬さんが機捜として組んだ初日､通報があった｡内容は､【弟が殺されてしまう】｡それだけで､あとは乱暴に電話は切れた｡緊急性ありと判断されて､私たちの無線に急行するようにと指令が下った」
目蓋を閉じれば､鮮明に思い出せてしまう｡
それだけ衝撃的だったのだ｡
「駆け付けた俺達が着いた先は､首を絞められた痕と刺し傷がある中学生…それが三日月だった｡その三日月の弟である子供の泣き声が響く家でよ｡異様だった｡人命優先の結果､父親には逃げられちまって､やつは未だに捕まってない」
＊
首に指の痕､腹部に裂傷が痛々しく刻まれた三日月は､傍らにしゃがんで脈を確認し救急車を呼ぶ桔梗の裾を弱く引いた｡【この子を安全な場所へ】｡つい､と巡る視線を辿ると､泣いている幼い子供の姿があった。
「貴女の名前は?」
「三日月…A」
弟が泣きじゃくりながら三日月のもとへ近づいてくると､微笑むのも辛いだろうに､三日月は気丈に笑う。
「ねぇちゃ､」
「…だい､じょぶだ……姉さんは光を､置いていったり､しないぜ?」
歯を見せて笑うその姿に､二人は胸を締め付けられる｡気を失ってしまえば楽だろうに､痛みに耐えてでも弟を守らんとするその姿勢｡
「……おいで｡…この音だけ､聞いてな」
弟の頭を自分の胸に押し付け､一定のリズムで優しく叩いてやる｡心音に安堵した弟はすうと眠りに落ちてしまった｡それと同時に､優しくリズムを刻んでいた手から力が抜ける｡
桔梗は止血しながら､どうか助かってくれと願うばかりだった｡
＊
「三日月はなんとか一命をとりとめた｡捜査が打ち切りになって､親戚同士どこか施設にと厄介払いみたいになってるところに出くわしちまって…俺が引き取ることにしたんだ」
陣馬さんに世話になった､といっていた三日月に､改めてそういうことかと頷く｡
伊吹が眼鏡を外して､目頭をおさえる｡
「……なぁ､志摩ちゃん｡俺､奥多摩で､弟がいなくなる前……Aちゃんに会ってる」
ランドセルを背負った元気な男の子と､男勝りな口調で話す女性｡親子にしては距離が近いような気がした､そんな些細なことを思い出した｡
「今の話し方も､笑い方も違う｡だから繋がんなかったんだ」
誰も頼れない環境のなかで､せめて弟だけは守ろうと気丈に振る舞っていた三日月Aの影｡
三日月を見て､どこか違うと感じていた理由につながるものを｡
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ルーツ(プロフ) - イマツギさん» コメントありがとうございます！ 書き留めていたものをちょくちょく投稿していこうと思っています！ 一挙放送楽しみですねぇ(*^-^) (2020年12月28日 17時) (
レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
イマツギ(プロフ) - 早く続きが見たいですね！更新頑張ってください！ (2020年12月28日 3時) (レス) id: e522761e6b (このIDを非表示/違反報告)
ルーツ(プロフ) - みかさん» ご愛読していただいてありがとうございます…! 遂に三日月が自分でひいていた境界線を打ち消して一歩前進しました｡この話､終わるまで長くなっちゃいそうです(笑)｡気長にいきますね! (2020年9月12日 12時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
みか(プロフ) - ルーツさん» 凄い、好き、好きです…！！(語彙力)ドラマは終わっちゃったけど、ほんと、、この小説好きで、ずっと続いて欲しい（（。良かった、境界線は、ただの線だもんね…乗り越えられて良かった… (2020年9月6日 21時) (レス) id: 72afcfd334 (このIDを非表示/違反報告)
ルーツ(プロフ) - みかさん» そう言っていただけると嬉しいです…!! 遅いながらも暇を見つけてちまちま更新していくつもりです! まだしばらく暑いみたいなので気を付けないといけませんね…(苦笑) (2020年8月25日 20時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ルーツ | 作成日時：2020年3月9日 19時
