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分駐所の布団の中で､三日月は静かに眠っていた｡胸が上下していなければまるで人形のように思えるほどにその顔は白い｡
伊吹は生きていること､ここにいることを確認するように三日月の華奢な手を自分の手で包む｡
男性の手に近い大きさだが､細くすらりとのびた指に､やはり女性なのだと思う｡
「……伊吹」
志摩が後ろから声を掛けると､伊吹は背を向けたまま頷いた｡
「奥多摩で交番勤務してた時ね､裸足で交番に駆け込んできて｡弟が居なくなったんだって､一緒に探してくれって」
伊吹は当時を思い出して､膝に肘をついて頬杖をついた｡
『黙っていなくなるような子じゃない…ッお願いだ､あの子は､あの子は私の――――――――』
「たからものなんだって｡命より大切な｡足は血だらけ､冬の寒い中で上着もろくに着ないでさ｡ずーっと走り回ってたみたいで､声も掠れて出てなくて……俺､忘れらんないでいたんだよね」
その話を黙って聞いていた九重は､この前の酔った三日月を思い出す｡彼女が望んだ通り､弟は帰ってきた｡しかし､何も話さない遺体となって｡
伊吹が死んだように眠る三日月を連れて帰ってきたときは､肝が冷えた｡
「……折れちまわねぇかな」
陣馬の独り言に､伊吹の三日月の手を包む手に力が入る｡
ガマさんが逮捕されたあの日､休憩時間に空の星を見上げる自分の背中に､何も言わずに背中合わせで座ってくれた三日月｡それから手を差しのべてくれた志摩｡二人が傍にいてくれた｡
相棒の志摩とは違って､すぐ隣にはいない三日月｡でもどこかで､必ず仲間を見守っていてくれた彼女｡
「届かないんだよなぁ」
「何がですか?」
「月みたいだなって｡すぐ近くに居るみたいで､ほんとは遠いの｡でもさ､必ず見えるとこにいんの｡昼でも夜でも」
九重は､分かる気がしますと言うと､マグカップに淹れられた珈琲を一口啜った｡
「Aはいる?」
部屋に入ってきた桔梗は､眠る三日月を見るなり何かを耐えるように唇を噛む｡そんな桔梗に､陣馬が尋ねた｡
「どうした?」
「UDIから連絡があった」
その声で､三日月が目蓋をゆっくりと持ち上げる｡伊吹の手を握り返した三日月が､眠りに落ちる前の出来事をぼうっとしたまま思い出す｡
「A､起き抜けに申し訳ないけど､これは伝えなきゃいけないことだと思う」
桔梗は一つ深く呼吸をして､言った｡
「弟の遺体､事件性ありと判断された｡神倉さんが､三日月に伝えるようにと」
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ルーツ(プロフ) - イマツギさん» コメントありがとうございます！ 書き留めていたものをちょくちょく投稿していこうと思っています！ 一挙放送楽しみですねぇ(*^-^) (2020年12月28日 17時) (
レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
イマツギ(プロフ) - 早く続きが見たいですね！更新頑張ってください！ (2020年12月28日 3時) (レス) id: e522761e6b (このIDを非表示/違反報告)
ルーツ(プロフ) - みかさん» ご愛読していただいてありがとうございます…! 遂に三日月が自分でひいていた境界線を打ち消して一歩前進しました｡この話､終わるまで長くなっちゃいそうです(笑)｡気長にいきますね! (2020年9月12日 12時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
みか(プロフ) - ルーツさん» 凄い、好き、好きです…！！(語彙力)ドラマは終わっちゃったけど、ほんと、、この小説好きで、ずっと続いて欲しい（（。良かった、境界線は、ただの線だもんね…乗り越えられて良かった… (2020年9月6日 21時) (レス) id: 72afcfd334 (このIDを非表示/違反報告)
ルーツ(プロフ) - みかさん» そう言っていただけると嬉しいです…!! 遅いながらも暇を見つけてちまちま更新していくつもりです! まだしばらく暑いみたいなので気を付けないといけませんね…(苦笑) (2020年8月25日 20時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ルーツ | 作成日時：2020年3月9日 19時
