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▽
大谷Side
「そんな、誰にでも優しいわけじゃないです。
好きじゃなきゃ、こんなことしません。」
……言ってしまった。
言うつもりはなかった……。
たぶんこれからも言う気もなかった。
正直、この気持ちが友情としてのものなのか
愛情としての気持ちかは分からなかった。
けど、今日買い物中にした
卓さんとのやりとりで、気持ちの輪郭が掴めてきた。
。
「卓さん、
昨日の【Aさんを取られる】っていうのは
もし誰か…彼氏とかいたら
連絡取っちゃダメっでことですか？」
「ん〜、ダメってことはないけど
あんまり良くないんちゃう？
…てかAちゃん、彼氏おるの？」
「いや…喋っててもアニメの話ばっかりなんで
いないとは思いますけど…。
友達として連絡してるのに？」
「まぁ、男と連絡取ってたら彼氏側はいい気せんかな…？」
「そういうもんですか。」
「翔平が逆の立場やったら？
俺とAちゃんが連絡取り合ってたら？」
「…あんま気分よくないですね。」
「翔平、顔。すごいことなってる(笑)
……珍しいな、人に興味なさそうやのに。」
鍵谷さんに指摘されて
鏡を見てみる。
ほんとだ、ひっどい顔。
「翔平…、
やっぱりAちゃんのこと好きやん。」
「いや、ただの友達ですよ。
異性だからじゃないですか？」
「いやいや、ただの友達やったら
そんな顔ならんし。」
「女の子の友達たくさんいる卓が言ってるんやから、これはマジ」
「陽平、あとで覚えとけよ。」
「マジで？」
野球にしか興味なかったのに、
野球にしか興味ないと思ってたのに。
自分では考えもしなかった状況に、少し戸惑う。
「まぁ、ええんちゃう？
野球一筋なんもいいかもしれんけど。
ほら、恋したら世界変わるっていうし。」
「好き…か…」
「あ、翔平がループ入った。
ほっといて次の店行きましょ〜」
「頑張れよ〜少年！」
。
「…あ、ごめん。私迷惑かけてばっかりで……」
そう言ったAさんから
ちょっと距離を置いたような
雰囲気を感じた。
(そういうことじゃない…)
「…そういうことじゃなくて。」
言うつもりはなかったのに、
Aさんの顔を見たら
溢れ出した気持ちを止めることができない。
言いたくて、伝えたくて、たまらなかった。
「Aさんのこと……好き…なんです。」
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作者名：あんころ | 作成日時：2021年8月23日 19時
