2 ページ3
あれから、それから。
月日が流れてすっかり辺りは夏満開！
照りつける太陽、蒸し蒸しと張り付く湿気、生暖かい風を送る扇風機
｢あちぃー……｣
パタパタと服を扇ぐ
ここは大学の食堂、外から入れば空調が効いているので天国かと見間違えるが、慣れてしまえば地獄となる
今世の夏に｢適温｣などという言葉は存在しない
｢溶ける……マジであかん…このままじゃ俺は…｣
｢そんなあなたにこれを授けましょう｣
机に突っ伏したセンラの頬にピヤリと冷たいものが触れる
ガバッと身体を起こし、その先に視線をやる
冷たいものの正体はアイスだった
授け主＿志麻＿とアイスを交互に見つめる
｢まーしぃ！神！ありがとう！｣
｢うんうん、たんと感謝しろ。ほんと暑いねぇ｣
｢暑い！ここエアコン届かへんみたいで｣
｢なんでそんな席に座ってんの。移動しろよ｣
｢そんな気力ないまま倒れとった｣
｢熱中症なってからじゃ遅い！水分補給しろ｣
｢何から何まで……ありがとう…｣
では改めまして。
今回の俺の救世主こと彼の名前は志麻。
高校1年生の時に出会って以来年齢を超えた友情で結ばれた、親友というやつ。
一学年上であり、俺が今大学2年だから彼は3年。
……くらい。もう話すことが特にない。
アッ彼女とは別れたらしい。
｢次何とってんの｣
｢なんやっけ、忘れてもうた｣
｢単位大丈夫なの｣
｢大丈夫やろ。テキトーにまったり上手いことやっとるよ｣
｢あそ。ならいいけど｣
どこかで貰ってきたのか、チラシみたいなうちわで涼しむ志麻
面倒見のいい彼は、こうして腐れ縁とも呼べるセンラの世話を焼いてくれている
お調子者でチャラいが、たまに見せる年上らしい言動が大変男らしい
普段はセンラの方がしっかりしてるように周りから見られるのだが、ふたりの時はその印象が逆転する
｢俺ばっか気にかけてもええことないでしょうに｣
｢無いけど｣
｢無いんかい｣
｢オレだって叶うことなら彼女欲しいわ｣
｢なんで別れたの｣
あ。と思った
聞いてはいけないことだったか。
志麻は彼女のことになると慎重になる
常々｢食えない男｣である彼が、増して｢読めない男｣に変わるのだ
しかしセンラの心配をよそに志麻は机に背中から項垂れて、懐かしむみたいに笑いながら言った
｢大人の事情ってやつ〜〜〜〜｣
｢なんやねん分からんわ｣
｢お子様には分からなくて良い｣
｢腹立つなぁ｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 26人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ななし | 作成日時：2021年8月12日 0時
