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今思えば、付き合いこそは長いがお互いの恋人について深く話したことは無かったと思う。
センラの好きな人のことも名前くらいしか知らなかった。
そのうえで当時は「彼女と同じ名前やなぁ」くらいにしか思ってなくて。
苗字なんて知らんままやったから同一人物だと疑うことなんて1度たりともなかった。
「うそ、」
「嘘じゃない。ほんと」
「ど、同姓同名とか…」
「いや顔見合せてそれはおかしいやろ。同一人物や」
「エ………」
場が膠着した
申し訳なさそうにAが手を挙げる
誰から当てられるでもなく、言葉を続けた
「ごめん、状況把握できてないのは私だけってこと?」
「いや
「志麻さんだけが理解してるってこと?」
「まぁ………誠に遺憾ながら、そういうこと」
再び、膠着
Aはなんだか堪らなくなり、もう一度そろりと挙手
「……あの、申し訳ないんだけど私行っていい?急いでて…友達と課題する約束してるの」
「あー…うん、なんか色々とごめんね」
「……俺もごめん」
「2人が謝ることはなにもないよ。それじゃあね、また」
……「また」。
まーしぃには言うんやなぁ。
遠くなっていく彼女の背中を見つめながらそんなことを思っていた
考えることが苦しくなる、嫌な気持ちだ
完全に姿が見えなくなったところで志麻がおそるおそる口を開く
「せ、センラ」
「正直まだ混乱しとる」
本当は聞きたくない。
元彼とかガチで邪魔やなって思うし、好きな子のことを好きやった男とか無理やって思う。
でも相手がまーしぃなら…話は変わる。
そんなのは分かってる。
分かってはいるけど顔を見ることができない
「うん」
「頭追いついてないし、追いつきたくもない」
「…うん」
はぁ。
ため息をついて、空を仰ぐ
目を閉じて深呼吸をひとつ、ふたつ
…うん。大丈夫。
自分を信じて彼に顔を向ける
気まずさはあるけど仲が拗れることはない
そんなヤワな関係じゃない。
「でも志麻くんが悪くないことだけはしっかりと分かるよ」
「……うん。」
「ひとつだけ聞いてええ?なんで別れたんやっけ」
「……Aの、親に言われて……」
いやそれ本人たちの意思ちゃうやん!?
確定で俺の出番無いやつやん!
「あ〜〜〜あ!やってられへんわ」
「…センラ、」
「なんも聞きたない!なんも言わんでええ。とりあえずご飯行こか」
「……うん。行こ」
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作者名:ななし | 作成日時:2021年8月12日 0時