拠り所 ページ4
◇
23時15分。
ハヤトさんに車で駅まで送ってもらった後、改札に入らず放心状態で東京街を歩き回り、疲れきった足でそこから更に電車を乗り継ぎ、はるばる東京のハズレに向かう。
この時間に人の家を訪れるというのは失礼すぎるが、この人物はむしろ深夜が活動時間。
遠慮なく、推し慣れたインターホンに手を伸ばすと、こんな時間にこんな場所に来る人なんて私くらいしかいないのか、スピーカーからは返答がなく、不用心にもドアが開いた。
「…来る時は連絡してって言ったよね」
そう言って怪訝そうに私を見るが、黙って突っ立っている私を見兼ねて、わざわざサンダルを履いて外まで迎えに来てくれる。
「…研磨」
一言そう呼べば、察しの良い研磨は私の手を引いて家に招き入れ、何も言わずに私を部屋にあげてくれた。
広い一軒家に住む研磨は、高校卒業後、大学に進学してすぐにゲーム実況者として有名になり、現在はKOZUKENとして世界に名を馳せている。
「…いつものでいいの？」
低い机の前で黙ったまま正座していると、ひょこっとドアから研磨が顔を出す。
何かある度にお邪魔している私は、ミルクティーをアイスで毎回頼んでおり、そのいつものという言葉にこくんと頷く。
少しして来客用と研磨専用の2つのカップを持って戻ってきた研磨は、私の前に綺麗な赤色のカップを置くと、正面ではなく私の隣に腰を下ろした。
「…で、今日はどうしたの？」
優しい口調で聞いてくる研磨に、先程のことを思い出して涙腺がうるっとするが、私はカバンから先程渡された紙袋を出して、研磨に突き出す。
「…なにコレ」
そう言って眉間にシワを寄せる研磨に、元カレが渡してきたと元をわざと強調して、中に入っていたリップを箱から取り出し、見て。と更に語気を強めて突き出した。
「…今日、ご飯行った時に振られた。
勝手だけどこれで許して欲しいって」
私が欲しいなと思っていた期間限定のデパコスを、別れ土産にされたなんて滑稽すぎる。
振る相手にプレゼントを渡すなんてどういう神経してんだ！
意味わからん！あのクソ男ー！
そう叫びながら腕を枕に机に突っ伏すと、もう夜だからと研磨は相変わらず冷静に注意した。
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西川あや(プロフ) - 黒尾ファンさん» コメントありがとうございます！時間はかかると思いますが、必ず完結させますのでお待ちください！ (3月30日 20時) (
レス) id: 6a34db6c3e (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 今回のも、面白かったですこれからもがんばってください。 (3月30日 18時) (レス) @page23 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 続き待ってます頑張ってくださいおうえんしちょるんで！！！好きやでこの作品 (3月29日 23時) (レス) @page21 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：西川あや | 作成日時：2024年3月26日 15時
