マブダチ ページ17
◇
「え!?私電車で帰るよ!」
もう遅いのでタクシーで帰ると言う飛雄は、私の家を経由して自分の家に帰ればいいだけだと相乗りを提案してくる。
タクシー何気に高いし、行きのタクシー代も奢ってもらっちゃってるからなぁ。
ご飯もほとんど飛雄が出してくれたし、やっぱり私は電車で帰ると歩き出す。
「俺が誘ったし、金は払います」
「そこまでしなくていいって?!」
そうやって言われんのが嫌なの!と至れり尽くせりなこの状況が怖くて一歩下がると、あっという間に手を引かれて車に乗せられてしまった。
・
「…ごめんね。私、飛雄より二個も上なのに」
飛雄が運転手さんに行き先を伝えている最中、私はあまりの不甲斐なさに顔を抑えて縮こまる。
「マブダチなんでしょ」
いつしか、私が飛雄に向けて言った言葉を懐かしそうに口にする飛雄に、そういえばそうだったねとアルコールも飲んでないのに大きな声で笑ってしまった。
少しずつ笑い止んでくると、車が段差で大きく揺れて、私がシートに放り投げていた手に大きくて硬い指先がちょこんと触れる。
「…えっちなことしないでよ?」
「しっ、してないっす!!!」
やだ〜とからかうように胸の前で手をクロスさせて言うと、ふざけないでください!と顔を赤くして怒り出す飛雄が、車のせいです!と運転手さんが可哀想なほど声を荒らげる。
冗談!とニッコリ笑って飛雄の顔を覗き込めば、ふいっと車の外に視線を逸らされてしまった。
「…Aさん、
自分が思ってるより全然変わってないですよ」
「え、?」
沈黙が流れ、三つ目の信号を過ぎたあたりで、不意にそう言って口元に笑みを浮かべる飛雄は、何か思い出したように肩を震わせて笑い始める。
なっ、なに笑ってんの!と今度は私が恥ずかしくなって問い詰めれば、飛雄は目を細めたままこちらに視線を向けた。
「会計の時に必死になって追いかけて来る人、
Aさんくらいです」
◇
「私、この日は大事な先約があるの。」
現在、電話の向こうでシャカシャカと音を立てている飛雄は、ゆっくり歯磨きをしているらしく、私の返事を聞いてじゃあ仕方ないですねと案外すぐに引き下がる。
『何するんすか?』
「合コン」
そう答えた瞬間、飛雄がむせるのが聞こえてきたので、私は好機とばかりに電話を切った。
◇◇
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西川あや(プロフ) - 黒尾ファンさん» コメントありがとうございます!時間はかかると思いますが、必ず完結させますのでお待ちください! (3月30日 20時) (レス) id: 6a34db6c3e (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 今回のも、面白かったですこれからもがんばってください。 (3月30日 18時) (レス) @page23 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 続き待ってます頑張ってくださいおうえんしちょるんで!!!好きやでこの作品 (3月29日 23時) (レス) @page21 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西川あや | 作成日時:2024年3月26日 15時