埼玉合宿 最終日 ページ44
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午後5時30分。
バスの停留所にて、合宿中色々お世話になりましたと、わざわざこちらに来て挨拶してくれる月島と翔陽くん。
「こちらこそ、ウチの主将がお世話になりました」
本当にお疲れ様と私が笑いかけると、月島が一条さんもお疲れ様でしたと高い頭をぺこりと下げる。
隣で沈黙を貫いていた研磨が、翔陽またねと声を発したのを横目に、月島が黒尾に絡まれてどこかへ連れていかれるのを笑って眺めていると、私のすぐ横を飛雄が通りかかる。
「とっ、びお…ちゃんもお元気で」
近くにいるのに話しかけないのは不自然かと、無意識に挙動不審になって声をかけると、飛雄はあからさまに眉にシワを寄せて私の前で立ち止まる。
「今年は受験で宮城帰れないし、また会えるとしたら全国の」
そう私が床に向かって話している途中、突如、飛雄に強く手を引かれて体勢を崩す。
飛雄の胸にいてっと顔から飛び込むと、耳元で私の名前を呼ぶ飛雄。
「また、すぐに電話します」
会えない分、声が聞きたいですと言って離れていく飛雄に、私は混乱して何も言い返せない。
ワナワナと恥ずかしさで震える私を見て、満足そうに笑った飛雄は、用が済んだとでも言うようにさっさとバスに乗りこんでいった。
「…A、今の何？」
「へっ！？」
一部始終を見ていたらしい研磨が、影山に何言われたのと目を細めるので、特に何も言われていないと研磨の視線から逃れるようにそっぽを向いて答える。
そんな研磨から逃げようとじりじりと距離をとって離れていけば、ドーン！！という声と同時にトラックに轢かれたような感覚に襲われる。
「っAー！！！」
「いッ！！！」
また春高予選で会おうな！と私を抱きしめる木兎の力は異常で、力一杯私が拘束から逃れようともがいても、全くとして出られない。
「け、んま…たすけ」
窒息しそうになる中、なけなしの力で近くにいる研磨に助けを求めれば、俺じゃ無理。とぷいっと私から顔を背ける研磨。
「ぼくと、し、しぬ…」
「木兎さん、やめてあげてください」
何？と不思議そうな顔で私を抱きしめ続ける木兎に、もう諦めようと全身の力を抜くと、そう言って救世主赤葦が颯爽と登場した。
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作者名：西川あや | 作成日時：2024年2月21日 11時
