埼玉合宿 最終日 ページ42
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「……わかんねぇっす」
「なら多分、勘違いだよ」
考えるような素振りをした後、お手上げといった様子で口を開く飛雄に、私は最低だけど少しホッとしてしまう。
さ、あっち戻ろう！と飛雄に声をかけて腕を引くと、なかなか動き出さない飛雄は、私が引いている方の腕を掴んで熱っぽい視線を私に向けた。
「でも、触れたいとは思います」
「え、？」
強い力で引き寄せられたかと思えば、私の肩に手を置く飛雄。
びっくりして距離をとろうと飛雄の胸に手を置くが、少し押してみてもビクともしなくて、私は行き場のない視線をきょろきょろさせる。
「Aさん」
いつも器用にボールを操る飛雄の手が、壊れ物を扱うように優しく、後ろに束ねた私の髪を掬って前に流した。
するりと毛先を撫でる飛雄に恥ずかしくて俯くと、顔にかかる私のこめかみの髪をそっと耳にかける飛雄。
「と、びお…なにして」
「真っ赤っすね」
耳まで赤いと笑いを零す飛雄は、イタズラっ子みたいな顔をしていて、見たこともない表情に顔に熱が集まっていくのが自分で分かる。
「…あ、今。キスしたいです」
そう言って急に近づいてくる飛雄の顔。
飛雄！おおお落ち着け！と驚いて声を上げるが、飛雄は止まらず、私は慌てて背中を仰け反る。
「っだめ！ごめん！」
飛雄の口を間一髪で手で抑え、だらだらと汗をかきながらそう叫ぶみたいに言うと、飛雄は少しずつ時間をかけて離れていった。
「飛雄のことは大好きだよ。
でも、私は…その、」
飛雄のことを可愛い弟みたいに思ってて…と私がゆっくり話すと、がっつきすぎました、すみませんと静かに謝られる。
気まずくて飛雄の顔が見れずにいると、Aさんといつもと変わらぬ様子で私の名前を呼ぶ飛雄。
「Aさんが誰かのになんのは嫌なんで、
惚れさせてみせます。」
「なんでそうなる…！？」
告白は断ったはずなのになぜそうなったのかと驚いていると、飛雄は満足気に笑って肉食べに行きましょうと私の手を引く。
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「Aさん、肉あげます」
その後、飛雄は私のお皿に肉を山盛りにしたり、おにぎりを持ってきたりと、何やら尽力してくれる飛雄。
「私、もしかして
食べさせとけば好きになるって思われてる…？」
心外なんだけど！？とショックでツッコめば、…違うのかと飛雄が小さく呟くのが聞こえた。
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作者名：西川あや | 作成日時：2024年2月21日 11時
