埼玉合宿 最終日 ページ40
◇
「あ、やっちゃんちょっといい？」
「はいっす！」
木兎とリエーフとお肉争奪戦を繰り広げていると、黒尾と仁花ちゃんが少し遠くで二人で話しているのが見える。
「あの2人ってさ、意外と付き合ってたりするのかな」
「他校の1年マネにさすがに手出さないっしょ」
「でも良く一緒にいるの見かけね？」
何話してるのかなぁと会話が気になって様子を伺っていると、二人が仲良く笑い合う姿が本当にお似合いで、なんだか心がモヤッとしてしまう。
黒尾はいつも私のピンチを救ってくれて、困っていたらすぐに気づいてくれる。
それに誰にでも平等に優しくて、ふざけているようで周りが良く見えていて、だから女子にモテるんだろうなと黒尾のことをぼんやり眺める。
「って、邪念！！！！」
パシンと自分の頬を叩き、私は今、恋愛に割く時間も余裕もないと自分に言い聞かせ、自分の気持ちに気づかなかった振りをする。
「Aさん」
「…………なあに、飛雄」
私、今忙しいんだけどヒリヒリする頬を擦りながら振り返ると、何もしてませんよね？と首を傾げながら近づいてくる。
「俺、よく考えたんすけど、
Aさんのこと好きかわかんなくなってきて」
ちょっと待って。
誰かに聞かれたらどうすんだと周りを見ながら、今ここでなんで言ったと驚いて目をひん剥いていると、私の横で同じ顔をして私を見る菅ちゃん。
イッチーと影山…いつの間に付きあったんだと驚く菅ちゃんの声を遮り、私たちそういう関係じゃないからと即座に誤解をとく。
好きな人には尻を叩かれたいって…と、恐らく烏野の潔子ちゃん防衛隊の言ったことを間に受けている飛雄が、難しそうな顔をして頭をひねる。
「好きってなんすか」
「後で聞くから黙って飛雄」
お口閉じなさいとチャックを閉めるみたいな動作をすると、何となく感じていた嫌な予感が的中し、まあそういうことなら俺の出番だなっ！と菅ちゃんが暴走し始めた。
「菅原先輩に任せなさ〜い」
「不安しかない」
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作者名：西川あや | 作成日時：2024年2月21日 11時
