【ハイキュー】音駒の3年マネージャー② (ページ35)

今日:18 hit、昨日:45 hit、合計:114,425 hit

埼玉合宿 4日目ページ35

・

月島の言葉で自分の顔がボンッと赤くなるのがわかる。

「え、ちょっ」

なんでこのタイミングで…と、焦って黒尾と月島を交互に見て震えていると、楽しそうな顔で去っていく月島は、私が誰のことを思ってそう聞いたのかわかっていたように思う。

え、なんの話？キス？と混乱する黒尾は、月島が落として言った爆弾に興味津々に飛びつき、なんの話しと執拗に聞いてきた。

「ち、違う…！違うの」

他校の後輩にキスについて話している変な女だと思われたくなくて、好きってどうやってわかるんだろうって話になった時に、月島がわかりやすい方法を教えてくれたと焦りながら説明する。

「それでキス…か」

先程までのおちゃらけた表情から一変、真剣な表情でそう呟くと、間違ってはないかもなと小さく笑う黒尾にドキリとする。

「つまり、好きな子には触れたくなるってことだろ」

そう言って私をじっと見つめる黒尾は、そっと私に手を伸ばし、大きな手で私の頬に触れる。

お風呂上がりのせいで下がった前髪。

いつもと違う雰囲気なのは髪のせいか、夜だからか分からないが、耳をそっと撫でられて、元々大きかった心臓の音がさらに大きくなる。

「…Aもそういう話するんだな」

恋愛なんか興味ないと思ってたけど、好きなやつでもできたかと聞いてくる黒尾。

目を逸らしてしまいたいほど、まっすぐ私を見つめてそう言う黒尾は、少しずつ私との距離を詰める。

どっくんどっくん今にも壊れそうなほどうるさくなる鼓動を聞きながら、あ、来る…と私はギュッと目を瞑った。

「っと、勉強しようぜ」

そう身構えたのと同時に、そういえば時間なかったんだったなと急に黒尾の声は遠ざかる。

驚いて目を開けると既に黒尾は前を向いてペンを持っており、真っ赤な顔で俯く私のことなど露知らず、ノートに向かって問題を解き始めていた。

「っ、〜！」

黒尾にバレないように静かに参考書に顔を埋めて、うるさい心臓の音を隠すために胸を押さえつける。

…あぁ、やってしまった。

そんな自覚とともに気づいしまったという後悔が押し寄せてきて、本格的に確信に変わってしまう前に頭の中を振り払うが、私はまたさっきのことを思い出す。

・

私たちの距離が少しずつ縮まったあの瞬間、私は間違いなく、黒尾とキスすることを期待してしまった。

◇