埼玉合宿 4日目 ページ30
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「っ仁花ちゃんAちゃん、避けて！」
体育館の中では、木兎が反対コートのエンドラインから凄く焦ったような表情でこちらを見ていて、周りのみんなの動きがスローモーションに見える。
「っ、」
仁花ちゃんが後ろにいては避けられない。
扉の方を向いて固まる仁花ちゃんを見て、私は避けるのは諦めて、木兎が放ったボールを咄嗟に右手で受ける。
手に当たってどこかへ飛んでいくのと同時に、その場にいた皆は、っお〜！と私に拍手した。
「かっけ〜Aさん！」
一瞬でボール弾いた！と目をキラキラさせて話す走に、ヒーローみたいだったねと同意する優生。
すま〜ん！とわざわざこちらまで来て叫ぶ木兎に、気にしないでとだけ声を掛け、仁花ちゃんの安否を確認すれば、放心状態で口をパクパクさせている。
「仁花ちゃん、平気？」
「ッあ！ハイ！お陰様で…！！」
助けてくれてありがとうございますと全力でお礼を言う仁花ちゃんに、私は安心して肩の力を抜いて、怪我がなくて良かったと呟く。
「大丈夫か？A、やっちゃん」
そう言って心配しながら近づいてくる黒尾に、問題ないという意味を込めて、軽く左手を上げて返事する。
「おいA、右手みせ」
「Aさぁん！」
なにか言おうとした黒尾の声を遮り、Aさんが弾いたボール俺の顔面にボール飛んできましたよぉ！と文句を言うリエーフ。
ごめんと謝りながら私は軽く笑い、大丈夫だった？と少し赤いおでこを撫でると、屈むリエーフは満足そうに笑った。
「それにしても良く反応できたな」
「反射的にスパッと！」
何より仁花ちゃんに怪我がなくて良かった！と褒める澤村に返答していると、少しずつ手首に痛みが出てきて、まずいかもしれないと冷や汗を垂らす。
危なかったな〜大丈夫か〜と心配して集まってくれる皆に大丈夫大丈夫と笑い、私は一応冷やしてくるねと言って、水道を目指して抜け出した。
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水道の角を曲がって一人になったことを確認した私は、怪我をしたかもしれないという真実を受け入れるのが怖くて、目を瞑りながら少し手首を曲げてみる。
「いっ、たぁ…」
ズキリと痛みが走って手首を抱えてしゃがみ込み、思わず声を漏らしてしまうと、おい大丈夫か！？と今まで聞いたこともないほど焦った声を上げた黒尾が、こちらに向かって走ってきた。
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作者名：西川あや | 作成日時：2024年2月21日 11時
