埼玉合宿 4日目 ページ29
◇
朝一番、烏野との試合が終わった後、今試合勝者である音駒は烏野のペナルティを体育館の影から眺める。
「それで翔陽くんさ、
昨日も上に向かってスパイク打ってて」
「…ふふふ」
昨晩の自主練中、190cm×3枚に向かってブロックアウトを狙った話を研磨にしながら、とんでもないセンスを垣間見たと私は感動する。
「ショーヨー、確実にレベルアップしてるね」
「うん」
それにいつも想像の上を行かれると私が笑えば、研磨も珍しく楽しそうに同意した。
・
「月島、坂道ダッシュおつかれ〜！」
「…一条さん」
烏野の面々が坂道から戻ってきたので、昨日より0.4秒速くなったんじゃない？と私が冗談を言うと、月島の隣にいた翔陽くんが月島すげーじゃん！と本気にする。
相変わらず翔陽くんは素直で可愛いね〜とオレンジ頭を撫で回していれば、今日も声は大きいですねと皮肉たっぷりに月島が微笑んだ。
「そういやさっきの田中のブロック！
よくあのブロードに追いついたなぁ」
「おう！月島が指示くれてな！」
縁下くんと田中くんのそんな会話を発端に、先程の試合についてコース読まれて悔しかったとか、あのレシーブが良かったとか、両校の選手たちがお互いに意見を交換し合う。
その間、私と潔子ちゃんは今日も暑いねなんてのんびり世間話して周りの声を聞いていた。
・
「暑すぎて死んだらどうしよ…」
「水分ちゃんととってれば大丈夫だよ」
Tシャツでパタパタと風を煽る私に、キリッとそう答える潔子ちゃんは、Aちゃんの飲み物持ってきてあげるといつも通り私の世話を焼いてくれる。
・
「仁花ちゃんもこっちおいで〜」
「は、はいっす！」
真面目に部員たちの様子を見る仁花ちゃんに、日陰で涼もうと声をかける。
「っ危ない！」
潔子ちゃんの背中を追いかけて仁花ちゃんと歩き出すと、突如、そんな誰かの焦ったような声が体育館から聞こえてくる。
声のする方へふと視線を向けると、換気のために開いていた扉から、ものすごい速さでボールがこちらに向かって飛んできていた。
・
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作者名：西川あや | 作成日時：2024年2月21日 11時
