東北遠征 ページ19
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「っおま、6点から進んでねえじゃん！」
「…え？」
夜久に釣られるように下を見ると、烏野の10番が後衛に回ってからの得点が書かれていない。
わわっと焦って試合の流れを思い出していると、どうせボーッとしてたんだろとでもいうような軽蔑の眼差しが隣から送られてくる。
「Aさん、代わりますか？」
「いや！優生はちゃんと見てなって！」
今回ばかりは私が悪い…！
気づいてくれた夜久にお礼を言おうとすると、腕を組んでこれでもかと煽ってくるので、私はギュッと口を結んでペンを握る。
不安そうにメモを覗き込んでくる夜久に、ちゃんと覚えてるから大丈夫だから！と言って書き込みを始めれば、じゃあ俺が何本スパイク拾ったか言ってみろよと疑わしそうに目を細める。
「2本！！」
「3本な！！」
「一条！試合中喋んなって何回注意させんだ！」
主審をしている直井さんからそんな怒声が聞こえてくると、烏野の人達がなんだなんだとこちらを見てくる。
なんでまた私だけ…！と、さすがに恥ずかしくて顔を伏せていれば、ローテが回ってコートに戻っていく夜久は、ちょいちょいこちらを振り返って笑っていた。
「もう分かったから！
アンタは3番のスパイクさっさとあげろって！」
「Aさん！
しーっ！また怒られちゃいますよ！」
◇
試合中盤、さっきまでの超人速攻をコツが掴めたように止め始める走。
上がることさえわかってしまえば、1枚ブロックで止められる10番のスパイクに、敵ながらメンタルやられるだろうな…と胸を抑える。
音駒は黒尾を中心に安定した攻撃を繰り広げ、あっという間に点数を広げていくが、その後のタイムアウト明けの烏野は開き直ったように良いプレーを重ね、両者楽しそうにボールを繋いだ。
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結局、接戦になった1セット目は音駒が勝利を収め、今までにないくらい良い動きができたことを各々実感しているのか、烏野も音駒もまだ試合を続けたいと表情が物語っている。
「っもう1回！」
そんな10番の声でもう一度試合が行われると、その後3試合ほど立て続けにプレーし、最終的には32ｰ30の苦しい試合内容が繰り広げられた。
◇
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作者名：西川あや | 作成日時：2022年10月7日 1時
