東北遠征 ページ13
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4月下旬。
集合の指示がかかると、直井さんが5月2日の夜から宮城に向かい、3日から6日まで遠征を行うという話をされる。
「…で、5日は白戸高校、最終日が烏野だ」
保護者宛に既に連絡は回してあるが、今日プリントを配布するとどこか嬉しそうに話すコーチに、みんなは引き締まった返事をした。
烏野といえばゴミ捨て場の決戦。
コーチも監督も本当に楽しみなんだなと私が考えていると、なぜか灰羽が嬉しそうに近づいてくる。
「Aさん！俺、遠征とか初めてです！」
「え、灰羽はお留守番だよ？」
「え゛」
今さっき直井さんがレギュラーだけって言ってたじゃん…と説明すると、ガーンと効果音が着いてしまいそうなほど項垂れてしまう。
「手白も今回はごめんね」
「いえ。こっちで自主練してます」
体育館は自由に使っていいと言われてるのでと話す手白を遮り、俺達も連れてってください！と灰羽が抗議する。
「リエーフ、
お前にとっては基礎練する良い機会じゃん」
「手白、申し訳ないけど付き合ってやってくれ」
そう夜久と海が口を出すと、素直に頷く手白とは反対に、灰羽はあからさまに不貞腐れてしまう。
「リエーフ！足使えって言ってんだろ！」
「オーバー脇開いてんぞ！」
「リエーフにトス上げたくない…」
そして、分かりやすくコンディションを崩す灰羽リエーフ君。
練習が始まって1時間、灰羽はは全体的に集中力がなく、散々みんなに叱られる。
「大丈夫、大丈夫。ちゃんと次修正ね」
私だけでもフォローを！と灰羽の背中を叩けば、思ったより気持ちが入ってしまったのか、灰羽はゲホゲホと咳き込んだ。
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「リエーフ、分かりやすく凹んでんな」
「…そりゃ寂しいでしょ」
練習が終わり、片付けをしながら黒尾と話していると、ふと灰羽の話題になる。
「マネは同伴で良かったな」
そう言って笑う黒尾に、音駒の主将さんは私がいないと不調になってしまうみたいなのでとからかい返す。
「…ま。フォローはできるだけしようと思うけど
あんま期待しないで」
私そういうの得意じゃないし。
さっきの灰羽を思い出して落ち込んでいれば、Aが一番適任だと突如、黒尾に背中を押される。
なんだよとバランスを崩しながら顔を向けた先には、片付けもせずに黄昏れる灰羽が、扉の段差に腰掛けていた。
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作者名：西川あや | 作成日時：2022年10月7日 1時
