獅子 ページ9
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「それに、ルールもよく分かんないし…」
しばらくこの子の悩みを聞いていたが、色々と心配そうに話す姿を見て、なんだかんだバレーに興味は持っているんだなと私は思わず笑ってしまう。
「意外と繊細なんだね」
「あ！笑わないで！」
少し顔を赤くして必死に訴えかけてくるその子に、私は素直にごめんと謝って、うーんと悩む素振りを見せた。
「ルールが分からなければ教えるし、
できないことがあれば一緒に練習もする」
君にやる気さえあればの話だけどと付け加えると、まだ何か悩んでいる様子。
まぁ、この感覚は私にもわかる。
何かに挑戦したくても、怖くてなかなか一方を踏み出せない気持ち。
「新しいことを始める勇気が出ないなら
背中だって押してあげるよ」
「…っ」
今から部活に連れて行ってしまうのも、無理やりだが良い機会かもしれないと、私は立ち上がってその子に手を伸ばす。
その手を何の疑いもなく掴んで、目をまん丸くして私を見るその子は、何より…と続ける私の言葉を、少し期待を含んだ眼差しで待った。
「スポーツ男子はモテるぞ」
◇
「おつかれさまでーす！」
遅れてすみませんと謝りながら練習中の体育館に踏み入ると、私の後ろを見て驚くバレー部一同は動きを止める。
「こちら、一年の灰羽リエーフ君」
今日から体験ということで、練習に参加します。
そう紹介すると、驚いてこちらに向かってくる黒尾に、私はやってやりましたとばかりに笑ってピースした。
◇◇
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作者名：西川あや | 作成日時：2022年10月7日 1時
