086 知的 ページ36
「ボクが何の考えもなしに行動するわけないこと、佐藤さんなら分かるでしょ」
「え……」
そう言って月島くんは自分の携帯をいじりだす。
これ、と見せてくれたものは1本の動画だ。
「さっきの。佐藤さんが殴られたところもちゃんと撮ってある」
この動画がある限り佐藤さんは不利にはなりませんよ、と私に優しく言う月島くん。
「す、すごい……月島くん頼もしい」
「……頬、ごめんなさい。もうちょっと早く助けてあげられれば、殴られなくて済んだのに」
「なんで月島くんが謝るの。助けてくれてありがとう、頬は冷やすから大丈夫」
「……」
「月島くんが気にすることないよ。また、何かあったら助けてね」
「……次、ないようにしてくださいよ」
月島くんなりに気にしてたんだ、と彼の意外な1面を見れた。
私も落ち着いたところだし事務室に戻らなければ。
ただ、顔がなあ……。割とひどい顔をしていると思うんだ。
頬が腫れてなければいいけど。
「ちょっと顔洗ってから行くから、月島くん部活行っていいよ」
「ダメです。事務室まで付いて行きます」
「……ありがとう」
今まで、イジワルしかしない月島くんだと思っていたけど、意外と優しく気を遣ってくれる彼がいることを知った。
根はとってもいい子なんだろう。少しひねくれてはいるが。
流しで鏡を見て、自分の顔を確認する。うん、やっぱりひどい顔。
そして、頬が腫れてはいないが青くなっている。
「うわー、これ目立つ……」
「ボクサーみたいですね、後々腫れますよ」
「めっちゃ嫌だ」
まだ人に会っていないが、この顔を見たら絶対どうしたのって聞かれる。
なんて答えればいいんだ。生徒に襲われましたって言えばいいの?
「佐藤さん、どう考えているかは分からないですけど、他の先生に言った方がいいですよ」
「……やっぱり?」
「当たり前です。報連相は基本中の基本デショ。それにこういう場合、あの写真がばら撒かれる前に第3者の味方を付けておいた方がいいです」
「うん、ごもっともです」
「佐藤さんのことだから、事が大きくなった時のあの男の事とかボクの事とか、色々考えてるんでしょうけど。これ、傷害事件ですしちゃんと言わないとダメですからね」
「そう、だね」
「……ボクも付いてるんで、大丈夫です」
今日はやけに、月島くんが頼もしく見える。
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ぴえん - めっちゃおもろくてもうとにかく好きです。ー日本語が変なのは気にしないでくださいー (2020年8月3日 10時) (レス) id: 243282b2cc (このIDを非表示/違反報告)
西(プロフ) - しらすパンさん» ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。頑張ります! (2020年5月31日 23時) (レス) id: c8d57ac98d (このIDを非表示/違反報告)
しらすパン(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました!!続き楽しみにしてます!更新頑張ってください! (2020年5月29日 21時) (レス) id: d0609b57e9 (このIDを非表示/違反報告)
西(プロフ) - みずきさん» ありがとうございます。今この時世ですからね、お互いステイホームで頑張りましょうね! (2020年5月17日 19時) (レス) id: c8d57ac98d (このIDを非表示/違反報告)
みずき(プロフ) - コメ失礼いたします!一からすべて読ませていただきました。とてもおもしろかったです!体調に気をつけて更新頑張ってください。応援しています!(*´∀`) (2020年5月17日 0時) (レス) id: bace071e6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西 | 作成日時:2020年5月16日 21時