077 引渡 ページ27
車から降り、研磨くんの忘れ物がないかを確認してロックをかける。
音駒の集団のもとへ歩いていくと、黒尾くんがこちらに気付く。
「研磨ッ!!」
今日一番の大声をあげる黒尾くんに、ビクッと体を震わせ咄嗟に私の後ろに隠れる研磨くん。
「お前っ、どれだけ心配したと思ってんだ! あれだけ勝手にフラフラすんなって言ったろッ!!」
いくら私の後ろに隠れても彼は私より10センチくらい背が高い。
私の頭を超えて黒尾くんは研磨くんに叱りつける。
他の子たちもこんな黒尾くんは滅多に見ないのか、少し心配そうだ。
「ご、ごめん……」
「烏野にも散々迷惑かけてんだぞッ!!」
ばつが悪そうに目を合わせないながらも、ちゃんと自分の口から謝った研磨くん。
うん、偉い偉い。後のお説教は帰ってから受けてね。
「まあ黒尾くん、研磨くんには私からも厳しく言っておいたから今はその辺にしてあげて。猫又監督たちは?」
「……今、戻ってる途中ッス」
「そっか、ちょっと黒尾くんだけいい?」
「……? 何スか?」
まだ研磨くんへの不満が残っているのだろうが、今の私に頭が上がらないのか言うことは聞いてくれる。
他の子たちから離れたところに呼び、小声でも聞こえるように顔を近付けてと手招きをする。
「研磨くんを見つけた時ね、変な男に絡まれてたんだ。私が話しかけて何かされる前に車で逃げたんだけど、本人も怖かったと思うから、少し優しくしてあげて」
でも私も厳しく注意しておいたのは本当だよ、と言うと表情が少し和らいだ。
そして突然、あーと頭を抱える。
「なんか俺主将として情けねえ。感情に任せて研磨怒鳴って。まずAさんにお礼言って研磨を心配するべきだよな」
「何言ってんの。研磨くんを心配したが故の説教でしょ。ここら辺に詳しい地元民の私に電話をくれたのもいい判断だよ。それに私のことなんて二の次でいいの」
「……Aさんて本当に俺の1個上?」
「もち」
まあ働く立場になったら考え方もだいぶ変わるからね。
ここは大人の私に甘えなさいってことよ。
「黒尾!」
「あ、監督」
数分もしないうちに、猫又監督と直井コーチが戻ってきた。
少し走ったようで若干の汗をかいている。
「佐藤さん、どうもありがとうございました。大変御迷惑をおかけして申し訳ない」
「いえ、無事で何よりです。それでですね――」
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ぴえん - めっちゃおもろくてもうとにかく好きです。ー日本語が変なのは気にしないでくださいー (2020年8月3日 10時) (レス) id: 243282b2cc (このIDを非表示/違反報告)
西(プロフ) - しらすパンさん» ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。頑張ります! (2020年5月31日 23時) (レス) id: c8d57ac98d (このIDを非表示/違反報告)
しらすパン(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました!!続き楽しみにしてます!更新頑張ってください! (2020年5月29日 21時) (レス) id: d0609b57e9 (このIDを非表示/違反報告)
西(プロフ) - みずきさん» ありがとうございます。今この時世ですからね、お互いステイホームで頑張りましょうね! (2020年5月17日 19時) (レス) id: c8d57ac98d (このIDを非表示/違反報告)
みずき(プロフ) - コメ失礼いたします!一からすべて読ませていただきました。とてもおもしろかったです!体調に気をつけて更新頑張ってください。応援しています!(*´∀`) (2020年5月17日 0時) (レス) id: bace071e6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西 | 作成日時:2020年5月16日 21時