県立烏野高等学校、事務職員です。【２】

069　線審 ページ19

「潔子ちゃん、私審判の方行っても大丈夫かな？ 音駒マネージャーいなくて大変みたいだから」

　「分かりました、お願いします」


　バレーの審判って結構人員いるし、難しいんだよね。

　私は中学と高校でめっちゃしごかれたけど、今でもあまりやりたくはない。

　でもそんなことも言ってられないから、音駒の人に声をかけて１人はベンチの方に戻ってもらう。



　「音駒高校対烏野高校、練習試合始めます！」


　礼をして、試合開始。

　私は線審、音駒高校側のエンドラインをやる。

　線審は気が抜けないから注意しなきゃ。

　研磨くんがサーブを打つ。いいコースだ。







　「ナイスレシーブ！」

　「ナイッサー！」

　「チャンスボール！！」


　互いに１点１点獲っていく。

　烏野は相変わらず変人速攻が初見殺しだ。

　だが、長々と続いて、このままずっと通用するかと言えば、そうもいかないだろう。

　７番の子が、大きいわりにすばしっこいから段々スピードに慣れてきている、ような気がしなくもない。

　音駒はレシーブが上手いなあ……。

　烏野に比べるとみんながみんな上手い。

　柔軟性もあって予測能力も確かだ。

　結構拾ってくれるから私はそんな仕事しなくて済む。気は抜かないけど。





　最初は、烏野の方がリードしていたのに。

　いつの間にか追い抜かれ、音駒はあと１点。マッチポイントだ。

　日向くんと影山くんの速攻。決まる、と思ったが


　「やっと捕まえた！！」


　音駒の７番に捕まり、１セット目は終了――









　「ありがとうございアシたーッ！！」


　中々いい試合だった。

　最終的には３試合やって全部音駒に負けたけど。１セットも獲れなかったけど。

　それでも、日向くんの新しい攻撃の糸口を掴めたし音駒のレシーブを間近で見たということで烏野にとってすごくいい経験になったはずだ。

　いいライバルになれそうな学校なのに、東京とちょっと離れているのが残念だ。

　日向くんのもう一回が底なしだったが、新幹線の時間もあるということで今日はもう片付け。

　選手たちはコートの方、潔子ちゃんと私はボトルとかの片付けをしている。



　「これで合宿も終わりかー、結構疲れたね」

　「そうですね、でも今年はAさんがいてくださってとても助かりました」

　「ほんと？ それなら良かった」


　潔子ちゃんと他愛もない話をしながら片付けを進める。

　私も楽しかったよ、この合宿。

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