県立烏野高等学校、事務職員です。【５】

210　無粋 ページ10

２セット目が始まり、角川学園の調子が増している気がする。

　角川学園の、というよりは”百沢くん”の調子が。

　それでも烏野がリードしているのは変わりない。

　あれだけ合宿で揉まれたんだ。

　そう簡単には落とさない。







・


　「烏野マッチポイント……！」



　何度も百沢くんに上からぶち抜かれたが、攻撃力は烏野だって負けていない。

　シンクロ攻撃や速攻で相手を翻弄し24点を取っている。

　あと、１点取れば烏野の勝利が決まる。

　油断はできない。

　百沢くんは前衛、対し烏野は一番ブロックの低いローテーション。

　ドシャットを狙うのはまず厳しいだろう。




　「影山くんナイッサー！」



　ここで影山くんのサーブはかなりいいチャンス。

　何ならこのままサービスエース決めちゃってくれ。

　て願うのは無粋だった。すまん。



　「上がった！」

　「百沢！ 頼む！」



　影山くんのサーブが上げられ百沢くんが攻撃モーションに入る。

　圧倒的高さからのスパイクをソフトブロックで受けた。

　東峰くん田中くんと何とか繋ぎボールが上がった。

　ラストは日向くんに託された。

　ここからのスパイクは難しい。

　だが日向くんはただ返すだけのことは考えていないようだ。

　どうやって、勝つか。どうやったら、２mに勝てるか。

　きっとそれだけを考えているのだろう。







　――バチッ



　日向くんのスパイクは確かに百沢くんの手に当たった。

　ボールは百沢くんの手を弾いて、角川コートの更に向こうへ。

　角川がボールを追うが、届かない。



　――ピピーッ！



　「うおっしゃあああああ！！」

　「ブロックアウト……まぐれか、狙ったのか」



　２セット目、烏野高校が25点先取し終了。

　よって烏野高校の勝利だ。







　「やったあああ！ フジクジラいなくても勝ったあああ！」

　「フジクジラって何？！」



　抱き合い喜んでいる仁花ちゃんたち。

　可愛いね。お姉さんも交ぜてよ。

　少し熱い視線を送ってみるが気付いてくれないまま帰る烏養先生について行ってしまった。



　「やっちーまたねバイバイ！ Aもバイバーイ！」

　「バイバイ！」

　「バイバーイ……さ、私たちも降りようか」

　「はい！」



　試合が終わって横断幕も回収し皆のもとへ向かう。

　仁花ちゃんはまだ興奮が治まらないようでフンスフンスとしていた。

　ただただ可愛い。うん、可愛い。

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