県立烏野高等学校、事務職員です。【５】

231　噛付 ページ31

20点台に乗って、１セット目の終盤に入る。

　一歩烏野がリードしているが23対22で油断はできない。

　そして次は青城、及川のサーブ。

　ここで流れを持って行かれる可能性だってある。

　一本、気を引き締めて必ず切らねば。


　ピリッとした空気が流れ及川がサーブトスを上げる。

　今日一番の威力を持った球が西谷くんと澤村くんの間を抜けた。




　――アウトだ。




　惜しくもアウト、運良くアウト。




　コースはかなり良かった。

　西谷くんと澤村くんのど真ん中、どっちが取るかで出来る隙を狙ったのだろう。

　だが距離が長かった。威力を上げることに力を入れすぎたのだろう。




　烏野が優勢なはずなのに、何故か感じる焦り。

　私が感じるくらいだし、コートの皆はもっと感じているかもしれない。

　２セット目以降を考えると少しゾッとする。

　だがこれで烏野はセットポイント。１セット獲ればかなり余裕ができるだろう。


　けど青城に後がないのも事実。

　岩泉の得点で食らいついた青城はここでメンバーチェンジをする。

　……ここで京谷か。うーん……京谷かあ……。




　「前回はいなかった選手だよな」

　「はい、あいつは２年で割と扱いが難しいヤツなんですよね……」

　「まあ、いかにもって感じだな……」

　「誰にも分け隔てなく噛みつくヤツですけど私特に嫌われてた気がするんですよね」

　「あーね。ああいうタイプは純粋ないい子ちゃんが苦手なのよ」

　「分け隔てなく噛みつくってヤバいけどな」




　そうこいつはヤバいのよ。生活態度も試合中も。


　岩泉のサーブで試合が再開する。

　烏野もしっかり返すが金田一くんのブロックに当たり青城のチャンスボールに。

　及川は金田一くんにトスを上げた。それは遠目にも分かる。

　だけどそこにどこから現れたのか京谷が跳び込んできた。

　仲間をも惑わすその行動に烏野は当然呆気にとられる。

　力強いスパイクを打ち放ったが、結果としてアウト。

　――つまり１セット目は烏野のものとなった。




　「１セット先取ー！」

　「よしよおおおし！」

　「こりゃイケるぞ？！ このまま２セット目も乗ってけ！！」



　仁花ちゃんたちは青城相手に１セット目を取ったことにかなり興奮している。

　私ももちろんすごいとは思うんだけど、それ以前に京谷がな……。


　「……はあ」

　「確かにあの子、同じチームだったら大変だろうな……」

　「ええ、とっても」

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