県立烏野高等学校、事務職員です。【５】

228　煽動 ページ28

「Aさんスーツかっけーッス！」

　「おっありがとー」

　「スーツ着てるだけで大人に見えるもんなんですね」

　「そらスーツは大人が着るもんだから当たり前だろ」

　「影山くん、多分月島くんが言いたいのはそういうことじゃないよ」




　て何で自分を馬鹿にしてくるヤツの代弁をしなきゃならんのだ。

　それでも伝わってなくて影山くんはキョトンとしている。

　もう君はそれでいい。そのままでいいよ。




　「Aさんは普段大人に見えないくらい若くて可愛いってことだろ月島！」

　「は？ どういう思考回路でそうなるワケ？」

　「何だ、そういうことか」

　「はーんそういうことね」

　「違うから。王様も佐藤さんも誤解しないでくれます？」

　「山口くん、月島くんあんな事言ってるけど」

　「天邪鬼です、気にしないでください」

　「お前覚えてろよ山口」

　「こっっっわ。山口くん御愁傷様」

　「え、裏切るんですか？！」

　「あ、青城が１セット獲った」

　「流れるような無視」



　山口くんから視線を感じるがあまり見ないようにしよう。

　目が合ったら終わりな気がする。



　「……佐藤さんはやっぱり青城応援してますか」

　「んー……まあ。どっちも応援してるけど、後輩には勝ってほしいよね」

　「伊達工も応援してるんスか？」

　「二口くんとは親知らず仲間だからね」

　「嫌な仲間ですね」

　「もう抜いたから大丈夫だけどね。でもまあ、都合のいい事しか言えないけど皆応援してるよ。青城も伊達工も、烏野も」




　『青城が勝ってほしい』がイコールとして『伊達工に負けてほしい』に繋がるわけじゃない。

　『烏野が勝ってほしい』っていうのも同じ事。

　インターハイの烏野対青城では勝敗の一致に悩み心から応援できなかったけど、それが一番失礼だよね。

　自分の気持ちに嘘はつきたくないし。




　「……絶対勝つ」

　「は？ 当たり前だろ。今更何言ってんだよ影山クン」

　「うるせえボゲ日向。改めて喝を入れたんだよ。そんくらい分かんだろ」

　「何か影山がそれらしい事言ってる……」

　「それらしい事ってなんだ日向ボゲエ！」

　「いつもの影山に戻った」




　あんまり難しい事考えると熱出すぞ、と日向くんが本気で影山くんの心配している。

　バレー以外だと割と日向くんの方が煽りスキルあるよね。

　皆煽らなきゃいけないルールでもあるのかい。

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